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平成11年度事業開始
愛知県・名古屋市 「循環型環境都市構築のための基盤技術開発(別冊)」
  pp.225-239
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精密濾過、分離膜技術の研究開発
Than Ohn1), 入谷 英司2), 向井 康人2), 片桐 誠之2), 富田 美穂3), 米川 均3), 野口 基治3)
1) (財)科学技術交流財団
2) 名古屋大学
3) 日本ガイシ(株)
Abstract  本研究では、ハイブリッド型リアクターおよび難分解性物質の微生物処理による処理水を、さらに循環再利用可能な親水用水レベルまで高度処理する技術の開発を目的としている。本WGの研究開発の特徴であるディスポーザーの導入は廃水の負荷の著しい増大に繋がり、これに伴い、リアクター処理水中の有機物や微生物等の濃度は通常の生活廃水を処理した場合に比べ、高くなることが予想される。そのため、このような負荷の高い処理対象廃水にも対応できる高度処理技術の開発が必要となる。高度処理技術として砂濾過、活性炭吸着、オゾン酸化、膜濾過など種々な手法が考えられるが、バクテリアの完全除去が可能であり疫学的に安全な水質を保証できることや洗浄操作が容易で透過流束の高い回復性をもつこと、さらには設備的にも極めてコンパクトな設計が可能であることなど多くの利点をもつ膜濾過法に本研究では着目し、精密濾過、分離膜技術の研究開発を行う。膜濾過操作における最も大きな問題点は、操作の進行に伴う濾過ケークの形成と膜の閉塞により処理効率が著しく低下することである。操作の効率を維持するためには、生成ケークや膜閉塞を引き起こす閉塞物質を周期的に取り除く必要があり、現在までに様々な方法が試みられている。また、クロスフロー濾過や回転円筒濾過などダイナミック濾過によるケークレス濾過法もあるが、これらの方法は大量のエネルギーを必要とするため、本研究ではエネルギー消費が小さいデッドエンド方式の全量濾過と周期逆洗操作を併用した精密濾過について検討する。精密濾過による高度処理により、大腸菌等のバクテリア類や懸濁微粒子など膜細孔より大きな物質は膜面上で完全に捕捉することが可能であるが、有機性高分子物質やリンなど膜細孔より小さく、膜を透過してしまう可能性のある物質に対しては、強力な高分子凝集剤のPolyaluminum chloride (PAC)による処理を施し、凝集・粗大化させることにより膜面上で捕捉することができる。しかし、捕捉物質による濾過ケークの形成や膜閉塞によって濾液の流動抵抗が増加し、濾過効率を著しく低下させるため、処理水の一部を用いた物理逆洗操作を周期的に繰り返し行うことにより膜面を洗浄する。こうした周期逆洗型精密濾過操作の最適化を図るためには、膜面上に堆積する生成ケークの特性や膜閉塞機構を究明する必要がある。本研究では、実験的に求めた生成ケークの特性や膜閉塞機構に基づき、消費エネルギーの最小化と処理水質の向上の観点から、最適な精密濾過の操作条件、逆洗条件などを決定する。次に、以上のラボ実験により得られた基礎データに基づき、実証試験を行うためのオンサイトマルチモード精密濾過システムを設計・製作する。オンサイト実験では、物理逆洗で除去しきれない不可逆的なファウリング物質による処理効率の低下に対し、薬品注入による化学洗浄も併用した物理・化学併用逆洗操作を導入するなど、さらなる膜閉塞防止策を検討する。オンサイト実験に基づき、実用化をめざした高性能な精密濾過処理技術の創製を図る。

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