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平成9年度事業開始
福岡県 「新光・電子デバイス技術基盤の確立 −新光・電子デバイスの開発による計測・制御・情報技術の創成−(別添)」
  397-410
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機能性薄膜のデバイス応用とデバイス製造・評価装置の開発
ダイヤモンド系薄膜を用いた電界放出ディスプレイの開発

福岡大学, 九州ミツミ(株), 九州松下電器(株), 凸版印刷(株)
Abstract  ダイヤモンド、フラーレン、カーボンナノチューブのような炭素系材料が、新しい機能性材料として注目を集めている。特に、ダイヤモンドやカーボンナノチューブからの電子放出を利用して電界放出ディスプレイ(FED)を開発する研究が盛んである。これは、微小な電子放出源を表面に多数形成し、真空中に放出された電子で陽極上の蛍光体を光らせる構造で、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)に続く次世代ディスプレイ候補の1つである。
気相化学成長(CVD)法で成長した(111)結晶面のダイヤモンドは、表面での電子親和力が負となることが知られており、これはダイヤモンド内から電子が出やすいことを意味している。また、カーボンナノチューブも、その特殊な構造から電子放出率が高い。このことから、ダイヤモンド系材料をFEDの陰極に応用する研究が盛んに行われている。しかし、ダイヤモンド系材料の電子放出機構は、未だ十分に解明されていなかった。
ダイヤモンド・ライク カーボン(DLC)は、ダイヤモンドと類似した物理特性を有しており、高硬度で、摩擦係数が小さく、化学的に不活性である。このことから、工具の機械的強度を上げるためのコーティング材として使われてきた。本研究では、DLCを電子デバイス、特にFED陰極への応用を目指した。DLCは、ダイヤモンド構造であるsp3とグラファイト構造であるsp2の混ざったアモルファス構造で、シリコンよりも硬く、バンドギャップも2〜3eVある。また、不純物のドープされていないDLCは1010〜1013Ωcmの高い抵抗率を示す絶縁体である。DLCの物理定数をダイヤモンド及びシリコンと比較し、表3-1にまとめる。ダイヤモンドをプラズマCVDで成長する場合、基板温度を700℃以上に上げる必要があるが、DLCはCVD法によって室温で堆積が可能である。これは、大面積のディスプレイをガラス基板で製作する場合に特に重要な特徴である。
DLCをFEDなどの電子デバイスに応用するためには、導電性を有するDLC薄膜が必要となる。そこで、RFプラズマCVD装置を独自に開発し、高導電性のDLC成膜を行った。また、表面からの電子放出機構を解明するために走査トンネル題微鏡を改造した電子放出解析装置を導入し、ダイヤモンド及びDLC表面からの電子放出をナノスケールで評価した。
また、電子陰極の特性をマイクロスケールで評価するSPFEC(scanning probe field emission current)装置を開発した。これらの装置によって、ダイヤモンド系材料に得意な活性化の機構が明らかになり、また電子放出の始まる場所についても知見を得た。次に、電界放出特性を向上するために、酸素プラズマ及びフッ素プラズマで表面処理を行なった。
更に、ガラス基板上にDLCを堆積するための多層膜作製などの技術を確立し、ガラス基板上に平面型FEDのプロトタイプを製作した。また、DLCをFED以外の電子デバイスに利用することを目指して、半導体レーザによるDLCのマスクレス加工、作製条件による仕事関数測定なども行った。

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