| | | | | 感覚·記憶から運動情報への変換は, 脳における情報処理機構の基本である。我々は, その情報処理が脳の異なる領域で分散的に, しかし階層的な秩序を持って行われていると考えている。本研究は, この仮説を検証し, その処理様式を明らかにすることにある。そのために, 高等動物の眼·頸運動系を対象とし, 視線制御における入力網膜座標系から出力の運動実行に必要な身体座標系への座標変換の問題が, いかなる情報処理過程により脳内で解かれているか, 又, 随意運動の発現と抑制がどのような脳内機構で実行されているのかを, 前頭眼野, 上丘, 脳幹, 基底核, 小脳の各段階で, 入出力を電気生理学的, 又は細胞内染色等の解剖学的方法, あるいは電気泳動による薬物の局所投与による薬理学的方法等を用いて同定し, 情報変換の動的神経回路網と随意眼球運動の発現と抑制の神経機構の解明を目指すものである。さらに, 注意や動機付け等の心理的プロセスが, 隨意的眼球運動の発現と調節に関わる時, 大脳や基底核がどのように選択的に活動するかを解明する。これらの実験と共に, 従来の実験では困難であった多点の神経活動の同時記録を脳の深部で行うことのできる, 3∼5点の記録部を持つ直径400∼500μmの多チャンネル同時記録用微小針電極の将来の開発を目指して, 試作品を作り様々な技術上, 経済上の問題点を検討する。 | | | |