| | | | | 21世紀の急速に増大する人口に由来する食糧危機に対して, 世界の陸地の67%を占める不良土壌のうち, 主として石灰質アルカリ土壌または酸性土壌でも旺盛に生育する食糧増産のための穀物を遺伝子工学の手法で創製することを研究の主目的とした. 従って当初は石灰質アルカリ土壌の植物生育の律速の主要因である「鉄欠乏」に関する研究をする「鉄欠乏耐性」班と, 酸性土壌での植物生育の律速の主要因である「アルミニウム過剰」に関する研究をする「アルミニウム過剰耐性」班の2本立てで研究をスタートした. 森敏, 西澤直子, 中西啓仁(東京大学)で組織した「鉄欠乏耐性」班は, イネ科植物のムギネ酸生合成経路(メチオニンからデオキシムギネ酸に至る)に直接関わるこれまで全く未知であった遺伝子の全て(sam, nas, naat, dmas, Ids2, Ids3) のクローニングに成功した. またその生合成を活発にさせるための周辺の代謝経路の遺伝子(IDI1, apt1, Fdh)や遺伝子発現制御に関わるタンパク質の遺伝子(IDI2), 鉄欠乏と直接の関係は不明であるが鉄欠乏で誘導される液胞へのトランスポーター遺伝子(IDI7)等もクローニングした. そして, アルカリ土壌ではほとんど育たないイネにゲノムnaat遺伝子を導入して, アルカリ土壌耐性イネの創製に成功した. | | | |