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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  515-536
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超高圧下における水素結合の量子力学現象の創出と発現
青木 勝敏1)
1) 物質工学工業技術研究所
水素結合は物質の構造と性質を決定している最も重要な化学結合である。ダイヤモンド構造を形成する小さな水分子から二重ラセン構造で有名なDNAのような巨大分子まで水素結合が主要な役割を果たしている物質は無数に存在する。また、KHPO4の反強誘電性-常誘電性転移で知られているように固体の巨視的性質の発現にも水素結合は主要な役割を果たしている。水素結合は分子間力でありながら指向性の強い結合であり、そのことが特異な構造や物性を発現する要因にもなっている。
柔軟性は指向性とともに水素結合を特徴づける性質である。水素結合距離(X-H…YのXY原子間距離)は0.22∼0.32 nmの広い分布をとることが知られている。結合距離の広い分布は結合の強さの分布を意味し、さらに結合を形成している水素原子H(もしくは陽子H+)の運動も多様な状態をとることを意味する。水素結合軸に沿ってプロトンの安定点は二カ所(X-H…YとX…H-Y)あることからポテンシャルエネルギーは二極小型で描かれる。極小間のプロトン移動は通常は熱励起によって引き起こされるが、十分小さい結合距離においてはトンネル運動によるプロトン移動が可能になる。

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