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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  3-18
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「細胞増殖における染色体複製の型の多様性と複製装置の活性化の分子機構」
新井 賢一1)
1) 東京大学医科学研究所
個体形成の過程で全能性の胚幹細胞は、体細胞系列の各種幹細胞と生殖細胞を生じ、その数は染色体複製により制御される。複製は通常ゲノム上の定点から開始し、秩序正しい細胞周期の進行と連動しているが、受精卵の初期発生に見られる特異性の低いDNA複製のように、発生や分化段階に応じてその複製起点の使用頻度や、塩基配列特異性を柔軟に変化しうる。これまで各種刺激に応答して誘導される染色体複製の様式とその制御機構についての知見は皆無である。そこで我々はこの知見を得るためにサイトカイン受容体を介する増殖シグナルの伝達機構について解析してきた。大腸菌において、DNA損傷によって誘導される第2の複製形態を見出したが、複製起点oriCとdnaAタンパク質に依存し、忠実度の高い通常の複製とは異なり、この型の複製は、組み換え酵素およびPriAタンパク質に依存し、組み換え依存性二重鎖DNA切断修復にも関与する。これらの知見から、真核細胞においても、性質の異なる複数の複製型が存在し、細胞増殖の制御やゲノム情報の保持において、それぞれ独自の役割を果している可能性が考えられる。本研究では、真核細胞の染色体複製とその制御機構を、シグナル伝達の最終標的として、また、各種細胞型における遺伝子発現の特異性とクロマチン構造と複製様式の関連などの視点から理解することを目的とした。具体的には、以下のような目標を設定した。1)血球細胞を用いて、サイトカイン刺激から染色体複製の誘導にいたる、シグナル伝達経路をさらに詳細に解析する。2)なかでも、染色体複製開始のマスタースイッチであるCDC7キナーゼの活性制御とそれによる複製起点活性化の制御機構を詳細に解析する。3)さらに、組み換え酵素依存性の染色体複製の機構と真核細胞における類似した経路の存在について検討する。4)また、種々の細胞型における染色体複製起点の分布を比較し、複製様式の多様性とその忠実度及びそれらを担う複製装置について転写活性化とクロマチン構造の変換との相関に注目しつつ解析する。

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