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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  113-123
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発生·分化を規定する新規シグナル伝達ネットワーク
松本 邦弘1)
1) 名古屋大学大学院理学研究科
多くの細胞増殖因子や分化因子のチロシンキナーゼ型受容体によるシグナル伝達経路として、RasーRafーMAPキナーゼカスケードが1990年代前半に解明されたことが生物学上の一大契機となり、シグナル伝達研究は生命科学の一つの先端的研究を担うようになった。さらに、このMAPキナーゼカスケードが酵母、線虫、ショウジョウバエから高等脊椎動物に至るまで広く保存された系であることが明らかとなり、MAPキナーゼカスケードに関する研究はシグナル伝達研究の中心的な地位を占めるようになった。本研究グループは、我々が開発した分子遺伝学的手法(酵母のMAPキナーゼカスケード反応を利用して哺乳類遺伝子をスクリーニングする方法)により哺乳類の新規MAPキナーゼカスケードのシグナル伝達因子TAK1を発見し、TAK1がTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達経路で機能することを見い出した。骨形成因子(BMP)を含むTGF-βスーパーファミリーは、高等真核生物の発生及び分化を規定する細胞外リガンドとして不可欠の役割を果たしている。TGF-βスーパーファミリーの受容体がセリン/スレオニンキナーゼを有することは知られていたが、その細胞内シグナル伝達経路は全く不明であった。TAK1の発見により、今まで全く未知であったシグナル伝達経路解明への手掛かりを得た。この発見を出発点として、新規シグナル伝達経路の全容解明と、その発生及び分化における役割を分子レベルで明らかにすることを本研究の第1の目的とした。第2に、本研究グループが開発した分子遺伝学的手法と生化学的手法により、さらに新規シグナル伝達分子群を見い出し、新たな研究領域を創出することを目指した。以上の研究推進のために、高等脊椎動物、ショウジョウバエ、及び線虫などの分子遺伝学、分子生物学並びに生化学を専門とする研究者チームを組織した。

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