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第4回領域シンポジウム予稿集 環境低負荷型の社会システム Social Systems for Better Environment Performance  7-12
地球環境保全のための国際的枠組みのあり方
佐和 隆光


発表論文等の記載
(国際制度グループ)
(1) 新澤秀則·西條辰義「京都メカニズムの意義と課題」
(財)地球産業文化研究所編著 『地球環境2000-’01』 ミオシン出版、2000年。
排出権取引の意義を解説し、アメリカにおける排出権取引の成果を評価した上で、当時交渉中だった京都メカニズム運用ルールの主要論点について解説を行い、筆者らの見解を示した。
(2) Hizen, Y., and T. Saijo, “Designing GHG Emissions Trading Institutions in the Kyoto Protocol: An Experimental Approach,”
Environmental Modelling and Software 16 (6), pp. 533-543, September 2001.
Hizen-Saijo (2002) に加えて, 取引方法として, ダブル·オークションを用いた場合との比較実験である. 相対取引と異なって, ダブル·オークションの場合には, 取引情報がオークションを通じて自動的に公開されてしまう. この実験において, 1. 情報の公開·非公開にかかわらず, 非常に高い効率性を観測した. 2. 限界削減費用はほとんどのセッションで時間を通じて均等化された. 3. 契約価格はほぼ競争均衡価格に収束した. 相対取引との比較では, 3. が異なっている. つまり, 競争均衡価格での取引が望ましいとするならば, ダブル·オークションが相対取引よりも優れているといえよう.
(3) Imai, H. & H. Salonen “Two-sided Bargaining and Representative Nash solution”
Mathematical Social Sciences, 2000
交渉問題において、各国の意見対立が1次元で示される問題集合に限定される場合の交渉結果を、ゲームの完全均衡を用いて求めた。結果は、ナッシュ交渉解を、各グループの 「代表」 によって求めた結果と一致する。
(4) Akira Okada “The Efficiency Principle in Non-cooperative CoalitionalBargaining,”
JapaneseEconomic Review 51 (1), 2000, 34-50.
グループ形成と交渉問題を、非協力ゲーム理論を用いて分析した。グループ形成に関して諸国間で利害対立が存在するとき、全員提携は必ずしも合意されないことが示される。次に、再交渉モデルを導入し、再交渉を許す場合、提携の逐次的な拡大によって効率的な合意は実現されることを証明した。また、再交渉の可能性を先読みすることにより、各国は最初に非効率な部分提携を提案する戦略的なインセンティブをもち、最終合意の公平性は阻害される可能性を示した。
(国際協力グループ)
(1) Goto, N., “Empirical examination of the relationship between carbon emissions and economic development,” 社会科学紀要、第50号、東京大学大学院総合文化研究科、国際社会科学専攻、2001年3月、pp. 111-148。
最近約20年間のデータの整理から、CO2排出量に関する環境クズネッツ曲線を検証した。
(2) 李志東 「中国の経済発展と環境保全」 『環境経済·政策学会年報第6号 経済発展と環境保全』 東洋経済新報社、2001年9月、pp. 216-229。
中国の経済発展と環境保全の現状と課題を検討したうえで、その未来像を展望した。
(技術戦略グループ)
(1) S. Mori, “Effects of Carbon Emission Mitigation Options Under Carbon Concentration Stabilization Scenarios”, Environment and Economics Policy Studies, Vol. 3, No. 2, PP. 125/142, 2000
地球環境統合評価モデルMARIAを用い、IPCCの排出シナリオSRESのA1、B1、B2の3シナリオファミリーに整合するケース設定を行った後、大気中の炭素濃度を450ppmv, 550ppmv, 650ppmvに安定化させる際の技術導入変化を見た。さらに、原子力不拡大下で炭素濃度を550ppmvに安定化すると炭素隔離技術の導入量が大幅に増えること、GDPがBAUから最大2.2%まで低下するが、バイオマス供給を増加させればこれは原子力拡大·安定化時の低下1.4%まで回復させられることが示された。
(2) K. Yamaji, J. Fujino and K. Osada, “Global energy system to maintain atmospheric CO2 concentration at 550ppm”, Environment and Economics Policy Studies, Vol. 3, No. 2, PP. 159/171, 2000
DNE-21の改良地球環境評価モデルLDNE-21により、IPCC-SRESのA1, A2, B1, B2の4シナリオファミリーに対し整合的なパラメータ設定を行うとともに、大気中の炭素濃度を550ppmvと安定化させた場合の技術戦略シナリオを導いた。このモデルからは、21脊柱はなお化石燃料に依存するところが大きく、炭素濃度安定化の際は炭素隔離と海洋投棄の大幅な導入が必要であることを示した。また、経済的には、21世紀半ばまで炭素濃度がやや上昇の後その後低下するというdelayed actionが導かれている。