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第4回領域シンポジウム予稿集 環境低負荷型の社会システム Social Systems for Better Environment Performance  37-42
質の利用を中心にすえた新しい都市水代謝システムの構築
渡辺 義公


主な発表論文の内容
(1) Water Research. 34 (11), 2895-2904 (2000)
Filtration resistance and efficient cleaning methods of the membrane with fixed nitrifiers (K. Kimura, Y. Watanabe and N. Ohkuma)
低濃度アンモニアの酸化と厳密な固液分離が可能な回転平膜表面に硝化細菌を付着させた膜処理プロセスを提案した。3000時間以上の長時間のろ過運転を行い、ろ過抵抗の推移と効果的物理洗浄法について研究した。ろ過抵抗の上昇はケーキ抵抗が主な原因であり、スポンジ片による洗浄が極めて効果的であった。膜透過Flux 0.8 m/dにおいても処理水のアンモニア濃度は0.01 mg/l以下となった。
(2) Desalination. 131, 225-236 (2000)
The effect of shear rate on controlling the concentration polarization and membrane fouling (R. Bian, K. Yamamoto, and Y. Watanabe)
濃度分極に起因する膜ファウリングを抑制する目的で、膜面にせん断力を与え、それによる効果について研究した。NF、UF膜ろ過において、せん断力の増加に従いフミン質の濃度分極は減少した。また本研究で用いたモデル式により、フミン質の除去率を予測することが可能であった。NF膜ろ過における膜ファウリング発生は、懸濁成分とフミン質が膜面に堆積したケーキ層の形成が主な原因である。
(3) Water Science and Technology-Water Supply (in press)
Fouling mechanism on hollow fiber UF membrane with pretreatment by coagulation/ sedimentation process (S. Minegishi, N-Y, Jang and Y. Watanabe)
膜ろ過運転時間の経過に伴う膜ファウリングの発生は、膜細孔径以上の寸法を持つフミン質等によって膜細孔の数が減したことが主な原因であることをモデル式で発現した。また、前処理として凝集/沈殿を行いろ過すると、非常に安定した運転が可能となり、この理由は主な膜ファウリング原因物質である高分子フミン質が前処理で除去されたためであることもわかった。
(4) Water Science and Technology-Water Supply (in press)
Performance of hybrid MF membrane system combining activated carbon adsorption and biological oxidation (T. Suzuki, Y. Watanabe, G. Ozawa)
活性炭と生物酸化を組み合わせたハイブリッド型のパイロットプラントMF膜ろ過実験を行い、濁度、アンモニア、有機物とマンガン等の除去性について調べた。本システムにおいて、一部の有機物は活性炭に吸着され、アンモニアと溶解性マンガンは膜浸漬槽に蓄積された微生物によって酸化される。バイオファウリングを抑制する目的で、数時間間隔で次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いて水逆洗を行う必要がある。
(5) Water Research (in press)
Nitrate removal by a combination of elemental sulfurbased denitrification and membrane filtration (K. Kimura, M. Nakamura and Y. Watanabe)
地下水から窒素を除去する目的で、単体硫黄を水素供与体とする脱窒と膜分離を併用した新しい水処理法を開発した。生物量1000mg-protein/LとHRT160分の運転条件で、25mg-N/Lの窒素が完全に除去でき、膜浸漬槽内における溶存酵素と硫黄/生物量の比が重要であることも明らかとなった。膜透過水の低下は極めて緩やかであり、0.5m/日の膜透過fluxで薬品洗浄を行わず約100日間運転が可能であった。
(6) Water Science and Technology-Water Supply (in press)
A novel biofim-membrane reactor for advanced drinking water treatment-pilot plant study (K. Kimura and Y. Watanabe)
既往の研究で、回転平膜の表面に硝化細菌を固定した新しい水処理プロセスを提案した。ベンチスケールの実験結果に基づきパイロットプラントを設計し、浄水場で実証実験を行った。河川を原水とした場合でも本プロセスは有効であり、前凝集沈殿を行うと薬液洗浄を行わず8ヶ月間の運転ができた。河川水を原水とした場合ケーキ層による抵抗が大きかったが、スポンジ洗浄は効果であった。極低温時以外には効果的な硝化が観察された。AOC (透過水10μm/L以下)、Mnの生物学的な酸化反応も確認できた。
(7) Applied and Environmental Microbiology Vol. 65, No. 7, p. 3182- 3191 (1999)
In Situ Analysis of Nitrifying Biofilms as Determined by In Situ Hybridization and the Use of Microelectrodes (S. Okabe, H. Satoh, and Y. Watanabe)
FISH法と微小電極を用い硝化細菌生物膜内に存在するアンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌の空間分布とその機能の関係について解析を行った。NH4+, NO2-, NO3-, pH, およびO2測定用の先端径が約10-15μmの微小電極の開発に成功した。FISHの結果より、生物膜内にはNitrosomonas oligotrophaに近縁なアンモニア酸化細菌は、5-10μmのクラスターを形成して生物膜内の全領域に存在しているのに対し、Nitrospiraに属する亜硝酸酸化細菌は主に好気領域に深部に存在していた。微小電極による測定の結果、活発なアンモニア酸化領域は膜表層付近で、亜硝酸酸化領域は膜深部で主に検出されFISH法の結果と一致した。
(8) Applied and Environmental Microbiology (in press)
Phylogenetic Identification and Substrate Uptake Patterns of Sulface-Reducing Bacteria Inhabiting An Oxic-Anoxic Sewer Biofilm by Combining Microautoradiography and Fluorescent In Situ Hybridization (T. Ito, J.L. Nielsen, S. Okabe, Y. Watanabe, and Per H. Nielsen)
マイクロオートラジオグラフィー (MAR) と蛍光in situハイブリダイゼーション法 (FISH) を組み合わせることにより、貧酸素環境にある都市下水生物膜内に存在する硫酸塩還元細菌の分子系統学的同定 (生態学的構造) および有機物利用特性 (機能) をシングルセルレベルの解像度で解析することに成功した。その結果、本生物膜内ではDesulfobulbusの約27%は硝酸塩を電子受容体としてプロピオン酸を酸化することが明かとなった。更に、Desulfobulbusの約10%は酸素を電子受容体として利用することも可能であった。
(9) Soil Sci. Plant Nutr., 45, 937-945 (1999)
Secreting portion of acid phosphatase in roots of lupin (Lupinus albus L.) and a key signal for the secretion from the roots (Wasaki, J., Omura, M., Ando, M., Shinano, T., Osaki, M., and Tadano, T.)
ルーピン根分泌性酸性フォスファターゼ(S-APase)の分泌部位および分泌の鍵となるシグナルについて研究した。-P培養液で育てたルービンの全根系からS-APaseは分泌された。ルーピンを+P培養液で生育させ、切断根を−P固体培地に移し、切断根を除去してからS-APaseの活性を活性染色により調査した結果、ルーピン根からのS-APaseの分泌は培地の低リン酸濃度によって6時間以内に誘導されることが示された。このときの根のリン酸濃度は十分高いにもかかわらずS-APaseが分泌されたことにより、S-APaseの分泌の鍵となるシグナルの一つは体内のリン酸濃度ではなく外部溶液中のリン酸濃度であると結論した。
(10) Soil Sci. Plant Nutr., 46, 427-437 (2000)
Molecular cloning and root specific expression of secretory acid phosphatase from phosphate deficient lupin (Lupinus albus L.) (Wasaki, J., Omura, M., Ando, M., Dateki, H., Shinano, T., Osaki, M., Ito, H., Matsui, H., and Tadano, T.)
分泌性酸性フォスファターゼ(S-APase)をコードする遺伝子LASAP2をリン欠乏ルーピンの根から単離した。LASAP2 cDNAは1,541bpの塩基配列からなり、462のアミノ酸残基によって構成される一つのORFを持つ。推定されるアミノ酸配列には、精製したS-APaseタンパク質の部分アミノ酸配列が含まれた。34のアミノ酸残基のシグナルペプチドから、LASAP2タンパク質は細胞外に分泌されると推定された。LASAP2のmRNAおよびタンパク質はリン欠乏条件下で根で特異的に誘導されることが示された。一方、LASAP1は根の表面など細胞表面に局在したリン酸エステル化合物を分解すると考えられた。
(11) J. Chem. Soc., Faraday Trans., 94, 2871-2875 (1998)
Metal-ion-planted MCM-41. Part 3. Incorporation of titanium species by atom-planting method (P. Wu and M. Iwamoto)
チタン含有MCM-41 (Ti-MCM-41) をMCM-41とTiCl4の固気反応 (アトムプランティング法) により調製した。Tiイオンの導入はSiの放出なしに進行した。反応温度が高くなるほどTiイオン導入量は増加したが、反応温度500°C以上では導入量が多すぎると、MCM-41中にアナタース型の酸化チタンが生じた。TiおよびSiの固体高分解能核磁気共鳴スペクトルを測定し、Tiの担持は表面シラノールとTiCl4の反応により進行していることを結論した。
(12) 触媒、41, 486-488 (1999)
ジルコニウムメゾ構造体による砒酸アニオンの交換除去 (北川博一、岩本正和)
ヘキサゴナル構造を有するジルコニウムメゾ構造体ZSの砒酸アニオン除去特性を検討した。ZSの砒素除去速度は非常に速く、かなりの高濃度でもほぼ10分で平衡に達した。砒素除去能は水溶液のpHに依存し、As(V)、As(III)ともにものアニオン種が除去されやすかった。IRを併用した実験から、前者の場合、H2AsO4-(aq)+HSO4-(ZS)+2OH-(ZS)→AsO43-(ZS)+HSO4-(aq)+2H2O(aq)で交換反応が進行していることがわかった。これらの結果はミセル共存下でアニオン交換が極めて高速に進行することを示しており、砒酸イオンの新しい除去剤の調製法を提案するものである。
(13) Analytical Chemistry, 72, 2463-2467 (2000)
A Multimicrospray Nebulizer for Microwave-Induced Plasma Mass Spectrometry (A. Hirabayashi, et al.)
マイクロ波誘導プラズマ質量分析装置 (MIP-MS) を高感度化するため、マルチマイクロスプレー噴霧器 (MMSN) 呼ぶ新しい噴霧器を開発した。本噴霧器は複数の微小噴霧口から構成され、各噴霧口に導入される液体の流量は従来のものより低減される。MIP-MSで評価実験を行った結果、試料液体の流量は5-250μL/分の範囲で、RSDは2%以下だった。低流量域では使用できない従来型噴霧器 (流量400μL/分以上) と比較し、MIP-MSの感度は2倍以上向上し、特に砒素では5倍向上した。
(14) Analytical Sciences, 17, 1113-1115 (2001)
Simple Miniaturized Amperometric Flow Cell for Monitoring Residual Chlorine in Tap Water (A. Hirabayashi, et al.)
水道水中の残留塩素濃度の連続監視を目的とし、マイクロファブリケーション技術を活用して小型のアンペロメトリー用フローセルを開発した。水道水中の遊離残留塩素に対する検量線は水道水質基準である0∼1.5ppmの濃度範囲で良好な直線性を示した。また検量線がほぼ原点を通ることから、妨害成分の影響も無視できる程度であることが示された。さらに水圧を利用して水道水を通水するポンプ不要のシンプルなモニタリングシステムを考案し、開発した小型セルを用いて検証を行いその有効性を示した。