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第4回領域シンポジウム予稿集 環境低負荷型の社会システム Social Systems for Better Environment Performance  25-30
微生物を活用する汚染土壌修復の基盤研究
矢木 修身


発表論文等
論文
1) T. Kumamaru, H. Suenaga, M. Mitsuoka, T. Watanabe and K. Furukawa (1) Nature Biotechnol., 16: 663-666 (1998) (2) Enhanced degradation of polychlorinated biphenyls by directed evolution of biphenyl dioxygenase (3) PCB分解性の異なる2つのPCB分解菌のbphA1遺伝子をDNAシャフリング法によりランダムな組換えを行った。その結果、諸種のPCBに対して高い分解性を持つ酵素が得られた。これらの酵素の遺伝子の塩基配列から、PCBおよびビフェニル関連化合物の基質特異性に関与するアミノ酸を特定した。
2) O. Yagi, A. Hashimoto, K. Iwasaki and M. Nakajima (1) Appl. Environ. Microbiol., 65: 4693-4696 (1999) (2) Aerobic degradation of 1,1,1-trichloroethane by Mycobacterium spp. isolated from soil (3) 土壌中より1,1,1-トリクロロエタン (TCA) 分解細菌を2株分離した。同定試験の結果、Mycobacteriumに属する細菌であった。TA27株は、75mg/lと高濃度のTCAを分解可能であった。TCAの分解生産物として2,2,2-トリクロロエタノールが検出された。
3) H. Wu, J. Kato, A. Kuroda, T. Ikeda, N. Takiguchi and H. Ohtake (1) J. Bacteriol., 182, 3400-3404 (2000) (2) Identification and characterization of two chemotactic transducers for inorganic phosphate in Pseudomonas aeruginosa (3) Pseudomonas aeruginosaのゲノム上に存在する26の走化性トランスデュサー様遺伝子からランダムに13遺伝子を選び、遺伝子破壊を行った。得られた遺伝子破壊株のリン酸走化性を調べた結果、ctpHおよびctpLがリン酸の感知に関わる走化性トランスデュサー遺伝子であることがわかった。ctpH ctpLの2重破壊株はもはやリン酸走化性を示さないことから、リン酸走化性トランスデュサー遺伝子はこの2遺伝子のみであると考えられた。破壊株の解析から、ctpHは高濃度のリン酸の感知、ctpLは低濃度のリン酸の感知に関与していることが明らかとなった。
4) K. Iwasaki, O. Yagi, Y. Ishibashi and H. Seto (1) Environ. Sci., 13, 483-489 (2000) (2) Survival and effect of genetically engineered peudomonades in the soil environment (3) 有用微生物の環境中での挙動を追跡するための水銀耐性マーカー遺伝子を組み込んだ組換えプラスミドを作成し、土壌等の環境中に広く生息している各種シュードモナス属細菌に導入してマーカー付き組換え微生物を作成した。土壌マイクロコズム中での各種組換え微生物の生残性を調べ、本マーカー遺伝子は環境中の特定微生物のモニタリングに有効であることを示した。
5) A. Hashimoto, K. Iwasaki, M. Nakajima, O. Yagi (1) Microb. Environ., 16, 109-116 (2001) (2) Quantitative detection of trichloroethylene-degrading Mycobacterium sp. TA27 with a real-time PCR product detection system (3) トリクロロエチレン等を好気的に分解可能なMycobacterium sp. TA27株の環境中での挙動解析を目的として、16S rRNA遺伝子をターゲットとした検出法の開発を行った。検出および定量にはSequence Detection System (ABI7700) を使用した。PCR条件を検討し、類縁菌株は検出されないTA27株に特異的で高感度な検出条件を見いだした。
6) T. Kikuchi, K. Iwasaki, H. Nishihara, Y. Takamura, O. Yagi (1) Boosci. Biotechnol. Biochem., 65, 2673-2681 (2001) (2) Quantitative and specific detection of a trichloroethylene-degrading methanotroph, Methylosictic sp. strain M, by a most probable number-polymerase chain reaction method (3) トリクロロエチレン(TCE)を分解するメタン酸化細菌Methylosictic sp. strain Mの最確値PCR法による計数法を開発した。TCE分解に関与する可溶性メタンモノオキシゲナーゼをターゲットとしてM株に特異的なプライマーを設計し、PCR条件検討を行った。本方法でTCE汚染地下水中のM株を迅速、簡便かつ特異的に計数することが可能となった。
特許
1) 岩崎一弘、矢木修身、内山裕夫、田中秀夫 (1) 特願平 9-302007、特開平 11-128904、特許番号 3227488 (2) 水銀汚染物の浄化法 (3) 水銀汚染物を、水銀化合物還元酵素遺伝子群を導入した組換え微生物により浄化する方法であって、前記組換え微生物がPseudomonas putida PpY101/pSR134であり、かつその系中にチオール化合物を共存させることを特徴とする水銀汚染物の浄化法。
2) 古川謙介、熊丸哲也 (1) 特願平 10-297665 (2) PCBおよび関連化合物を分解する酵素をコードする遺伝子 (3) 異種のPCB分解菌由来のビフェニルジオキシゲナーゼの末端ジオキシゲナーゼ大サブユニットをコードする遺伝子をDNAシャフリングにより組み換えることによって得られ、PCBおよび関連化合物を分解するビフェニルジオキシゲナーゼの末端ジオキシゲナーゼ大サブユニットをコードしていることを特徴とするキメラ遺伝子。
3) 大竹久夫 (1) 特願平 11-354381 (2) 運動性を有する微生物を用いる有害物質の検出方法 (3) 多くの細菌は、鞭毛モーターを回転運動させ水中を泳ぐ。鞭毛モーターの回転運動は、有害物質により極めて鋭敏かつ迅速に阻害され、その結果細菌の運動が停止する。有害物質により細菌が運動を停止する程度を蛍光測定により簡便に計算する手法を考案することにより、運動性細菌を用いて化学物質の毒性を迅速に試験する方法を発明した。
4) 古川謙介、陶山明子 (1) 特願 2000-085825 (2) 新規なテトラクロロエチレン脱塩素化酵素遺伝子 (3) テトラクロロエチレン (PCE) 汚染土壌より分離したDesulfitobacterium属 Y51株はPCEを0.6μMの低濃度から960μMの高濃度にわたってcis-1,2-ジクロロエチレンへと完全に脱塩素化する。Y51株からPCE脱塩素化酵素を精製し、PCE脱塩素化酵素遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。本遺伝子はDesulfitobacterium属からはじめて単離された脱塩素化酵素遺伝子であり、広範な濃度のPCEの迅速な脱塩素化を示す遺伝子である。
5) 矢木修身、岩崎一弘、橋本顕子 (1) 特願 2000-115688 (2) 微生物による有機塩素化合物汚染環境の浄化方法 (3) Mycobacterium gilvum AK株またはMycobacterium duvalii OS株を有機塩素化合物による汚染土壌または汚染水に散布することを特徴とする浄化手法。
6) 中村邦彦 (1) 特願 2001-295761 (2) 水銀汚染物の浄化法とそれに用いる微生物 (3) メチル水銀や2価の水銀イオンなどの水銀化合物に汚染した土場に水銀化合物を水銀浄気に変換できる海洋細菌を加え、土壌中の水銀化合物は、細菌の酵素により水銀浄気に変換され除去される技術。