TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


第3回領域シンポジウム予稿集 環境低負荷型の社会システム Social Systems for Better Environment Performance  19-22
[Image PDF (631K)] [成果一覧


CO2倍増時の生態系のFACE実験とモデリング
小林 和彦1)
1) 農業環境技術研究所情報解析·システム研究室
18世紀半ば以前、大気中のCO2濃度は約280ppmV(1 ppmVは体積比率で百万分の1)で長期間ほぼ一定だったが、産業革命の開始とともに上昇し始め、2000年現在約370ppmVとなっている。CO2濃度のこの急激な上昇の原因は、化石燃料の燃焼、セメント製造、森林伐採等の人間活動であり、CO2濃度の今後の推移も人間活動に依存する。人間活動には、今後各種のCO2排出量削減努力が加わり、CO2濃度の予測は難しいが、今世紀の半ばないし後半には、約560ppmVに達すると見られる。産業革命以前のちょうど2倍になるわけで、その時に植物の生長や生態系はどう変化するか、或いはしないか。これを明らかにするのが、本研究の目的である。
CO2濃度の上昇が植物に及ぼす影響は、実験室ではかなり調べられているが、その結果が現実にそのまま当てはまるわけではない。自然植生はもちろん、農作物もまた、実験室ではなく生態系のただ中にあって、土、水、気象などの環境変動や、他の環境生物、栽培操作の影響を受けるからである。従って、大気CO2の増加が植物の生長と生態系の動態及ぼす影響を知るためには、できる限り実際のフィールドに近い条件で実験を行う必要がある。本研究では、イネの生長と水田生態系が、CO2濃度の上昇でどう変化するかを、FACE(開放系大気CO2増加)実験で明らかにしようとする。
FACEはFree-Air CO2 Enrichmentの略で、実験フィールドに囲いを一切せず、高濃度のCO2を直接放出することにより、植生の近辺のCO2濃度を高める方法である。いわば未来の高CO2濃度下のフィールドを、今作り出すことができる。世界には、約17のFACEプロジェクトがあり、樹木、自然植生、牧草地、湿地、農作物を対象に実験が進められている。本Rice FACEプロジェクトは、世界最初のイネを対象とするFACEである。

[Image PDF (631K)] [成果一覧

Copyright (c) 2002 科学技術振興事業団