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平成12年度事業開始
神戸市 「再生医療にかかる総合的技術基盤開発」
  131-138
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CPC(細胞培養センター)を利用した血液・血管の再生研究
Ex Vivo増幅臍帯血移植の臨床試験に向けた基礎整備

永井 謙一1), 橋本 尚子1), 伊藤 仁也1)
1) (財)先端医療振興財団
Abstract  臍帯血移植はドナーへの直接的負担がないことに加え、最適な病期に移植が可能であることを長所とするが、一方で短所として、細胞数の問題から体重の重い患者には適応とならない場合が多いこと、また移植後の造血回復、特に血小板の生着が他の造血幹細胞移植と比べ顕著に遅延することが知られている。
造血回復の関連因子として、Magliaccioらは、臍帯血移植施行例204例において移植細胞数と造血回復能、及び移植関連合併症との関連について検討したところ、移植細胞数が多くなるほど好中球数及び血小板数の回復が早くなる傾向にあり、総有核細胞数は25×106/Kg以上、コロニー形成細胞数は50×106/Kg以上で有意に移植関連合併症が減少したと報告している。またWagnerらはCD34陽性細胞数で1.7×105/Kg以上、Laughlinらは1.2×105/Kg以上移植した場合、それ以下の細胞数を移植した群に比べて有意に生存率が高いと報告している。すなわち移植細胞数とくにCD34陽性細胞数が多いほど造血回復能が高く、予後も良好と考えられることから、ex vivo増幅したCD34陽性造血幹/前駆細胞が移植に応用可能となれば、従来臍帯血移植の対称とならなかった体重の重い患者も対象となるばかりでなく、生着不全の減少や生着日数の短縮が期待される。
ex vivo増幅した臍帯血を用いた臨床試験は1997年に2つのグループが開始しており、いずれも増幅しない臍帯血と増幅した臍帯血を混合して移植する方法がとられている。McNieceらは、37名(成人25名、小児12名)の血液腫瘍及び乳癌患者を対象として、保存された臍帯血の40%あるいは60%の画分からCD34陽性細胞を分離後、SCF、G-CSF、及びmegakaryocyte growth and differentiation factor (MGDF) 添加培地で10日間培養した細胞と、増幅しなかった残りの画分の細胞とを合わせて移植した。一方Kurtzbergらは、27名(成人2名、小児25名)の血液腫瘍患者に対して培地還流培養システムAstrom ReplicellTMSystemを用いて臍帯血を12日間培養し、未処理臍帯血を移植後12日目に増幅臍帯血を移植した。培養成績及び移植成績を表1に示す。

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