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平成12年度事業開始
神戸市 「再生医療にかかる総合的技術基盤開発」
  113-120
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CPC(細胞培養センター)を利用した血液・血管の再生研究
増幅ヒト造血幹細胞評価系の確立及び応用

中畑 龍俊1), 平家 俊男1)
1) (財)先端医療振興財団
Abstract  骨髄、末梢血、臍帯血から採取された造血幹細胞の移植は、種々の悪性腫瘍、血液免疫疾患、遺伝性疾患の根本的治療法として確立されているが、その適応拡大に伴い、ドナー不足が深刻な問題となっている。我々は、新規のサイトカインを含む様々なサイトカインの組み合わせを用いて、ヒト造血幹細胞のex vivoexpansionを試みている。中でも、sIL-6R/IL-6を含むサイトカインの組み合わせでヒト未熟造血幹細胞のexpansionを達成した。体外で増幅させたヒト造血幹細胞の安定性および機能評価としては、増幅した細胞の表面抗原を解析する方法、半固形培地を用いて血液コロニーを観察し、前駆細胞の半定量を行う方法、骨髄ストローマ細胞との共培養にて長期に維持できるコロニーを測定するLTC-IC法などのin vitro試験が行われている。しかし、造血幹細胞は自己複製能と分化能を持ち合わせた細胞であり、これらの機能解析を行う最も適した方法は、現在のところ免疫不全マウスに移植した系で造血再生構築能を測定する方法である。
本研究では、ex vivo増幅させた臍帯血造血幹細胞を免疫不全マウスに移植した系で、安全性および効能の評価を行う。また、従来行われてきた造血幹細胞の評価は、重症複合免疫不全マウス(SCIDマウス)に糖尿病自然発症マウス(NODマウス)をかけ合わせたNOD/SCIDマウスにて行われてきたが、ヒト細胞の生着は確認できるものの全ての血液細胞系統への分化の方向を見るのには適していない問題点があった。特にヒトのT細胞はこのマウスでは再構築されず、細胞性免疫能の再構築を評価は不可能である。最近、NOD/SCIDマウスにIL-2、IL-4,IL-7,IL-9,IL-15,IL-21など免疫系細胞に発現するサイトカインレセプターの共通鎖であるcommon γ鎖をノックアウトしたマウスを交配したNOD/SCID/γnullマウスが開発された。このマウスはNK細胞活性も完全に消失しており、より少量の造血幹細胞からのヒト血球を生着させ、さらに従来の免疫不全マウスでは観察することができなかったT細胞系の再構築も観察できるようになってきた。
我々はこのマウスを用いて臍帯血CD34陽性細胞を移植し、血系細胞の再構築能を調べるとともに、ヒト免疫能の再構築能の評価を行うことを目標としている。
臍帯血CD34陽性細胞をNOD/SCID/γnullに移植し、末梢血、骨髄、脾臓、胸腺等におけるヒト血液細胞の出現を確認した。さらに、その分化の方向性についても検討し、従来の免疫不全マウスでは認められないヒトT細胞をも含むすべての系統への分化を確認した。無血清培地で増幅した造血幹細胞にも、NOD/SCID/γnullの骨髄を再構築する能力のあることが確認された。また、様々な移植条件、障害活性のもと、近年注目されている造血組織を超えて分化する可塑性に関する検討を行った。

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