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平成11年度事業開始
愛知県・名古屋市 「循環型環境都市構築のための基盤技術開発(別冊)」
  pp.35-64
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有機廃棄物高温ガス変換燃料電池発電プロセスの研究開発
朴 桂林1), 森 滋勝2), 小林 潤2), 板谷 義紀2), 小林 信介2), 劉 貴慶2), 羽多野 重信2), 山口 正隆3), 浜井 満彦3), 近藤 元博3)
1) (財)科学技術交流財団
2) 名古屋大学
3) トヨタ自動車(株)
Abstract  現在,一般廃棄物のリサイクル率は約10%程度に留まり,一般廃棄物の排出量の低減とリサイクルシステムを早急に図ることが求められており,その推進のために,循環型社会の構築を目指した「循環型社会形成推進基本法」が近年成立されている.この一環として,広い地域に分散して発生し回収されるプラスチック等の有機廃棄物のリサイクル率を向上させることも,重要課題となっている.このようなリサイクル法のひとつとであるエネルギー利用は,従来のゴミ燃焼発電や最近ではガス化溶融発電技術がまず先導して開発・導入が進められている.しかし,いずれも大型炉(150T/d)を想定したものであるため廃棄物の広域からの集約が必要となり,廃棄物の輸送コストに加え,輸送に伴う周辺地域での環境負荷の増大などの問題が憂慮されている.また,近年の化石燃料の大量消費によるCO2排出問題だけでなく,日本のエネルギー海外依存構造を改善するため,石油に代わる新エネルギーの導入大綱において新エネルギーの供給目標が定められており,このひとつとして木質バイオマスが再生可能エネルギー源として注目されている.日本における木質バイオマスの排出量(森林)は1700万t/年,廃棄物系の木質バイオマスは年間約1000万トンであり,その有効利用開発目標は,現在(1999年)のバイオマス発電量(80MW)を2010年には約4倍(330MW),バイオマス熱利用を加えると6倍にするとされている.しかし,これまでは収集や輸送コストの面から,大規模な燃焼発電に対応する原料供給が困難であるため,発電規模を小さくする必要があるが,そのときの発電効率が平均で約12%と低くなるなどの問題を有しており,木質バイオマスのエネルギー利用は十分進んでいないのが現状である.そこで,地域に分散して発生・回収される有機廃棄物や木質バイオマスを原料として,環境負荷を抑制しながら高効率で小規模発電を行うことを目的として,地域分散型廃棄物高温ガス変換燃料電池発電システムを提案した.本システムはFig.1-1に示すように,一炉処理型気流層型高温ガス変換炉を使用し,乾式ガス精製を行った後,溶融炭酸塩型(MCFC)または固体酸化物型(SOFC)の燃料電池を使用して高効率発電を行う方式である.ただし,一炉型高温ガス変換炉としては5T/d以上の処理量に対しては旋回型噴流層ガス化炉採用するが,処理量2T/d以下に対してはコンパクトでシンプルな下降流型(Drop Tube Furnace, DTF)炉を採用する.これまで,噴流層高温ガス変換技術は石炭ガス化プロセスにおいて実績があるが,有機廃棄物噴流層高温ガス化に関する研究はほとんど見受けられず,また実用例もないのが現状である.また,木質バイオマスのガス化に関する研究はこれまでも多数報告されているが,ラボスケールレベルのデータが中心となっており,実証レベル試験結果の報告は少ない.本研究では,地域分散型有機廃棄物と木質バイオマス高温ガス変換燃料電池発電システムとして,地域に分散して発生・回収される有機廃棄物と木質系バイオマスを原料とし,環境負荷を抑制しながら高効率で小規模発電を行うシステムを提案するとともに,実用化に向けた研究開発を行った.具体的には,開発が進められている次世代型燃料電池発電を中心とした新たなエネルギーシステムを実現するうえで,主要な高効率小型ガス変換技術および燃料電池の燃料として十分活用しうる品質を有するガス精製技術の研究開発を行う.

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