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平成11年度事業開始
愛知県・名古屋市 「循環型環境都市構築のための基盤技術開発(別冊)」
  pp.187-195
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化学熱輸送システムの研究開発
架谷 昌信1), 小林 敬幸1), 出口 清一1), 渡辺 藤雄1), 小林 潤1), 窪田 光宏1)
1) 名古屋大学
Abstract  循環型都市の構築に向けては、リサイクルなどの物質循環と共に、エネルギーの高効率利用の促進が不可欠であることは言うまでもない。この観点からわが国のエネルギー消費構造を概観すると、わが国で投入される1次エネルギーのうち、有効に利用されているのはわずかに35%程度であり、残りの約65%は未利用のまま排熱エネルギーとして大気中に放散されている。この現状を踏まえると、エネルギーの効率的な利用を図るには、未利用のまま大量に廃棄されている排熱をいかに有効に利用するかがそのキーポイントになると考えられる。排熱の有効利用を考えた場合、3つの大きな阻害要因が考えられる。量的ミスマッチ、質的(温度的)ミスマッチ、地理的ミスマッチである。量的ミスマッチに対しては熱エネルギーの貯蔵(蓄熱)技術、質的ミスマッチには吸着ヒートポンプ技術があり、本研究開発においても蓄熱・熱改質機能を有する吸着ヒートポンプの開発を行ってきた。最後の地理的ミスマッチに対する技術として熱輸送技術がある。熱輸送技術としては、従来から水、スチームなどを中心とした顕熱、潜熱輸送技術として研究開発が進められてきた。しかしながら、いずれの熱輸送方法についても長距離熱輸送に適さないという課題点があり、その効果は極めて限定的なものにならざるを得ない状況にある。これに対して、化学熱輸送技術は熱エネルギーをいったん化学物質エネルギーに変換させた後、物質輸送の形で熱エネルギーの輸送を行わせるため、従来のヒートパイプに比べ輸送経路からの熱損失が少なく長距離の熱輸送が可能である、熱化学反応を伴うためエネルギー密度が高いなどの利点が挙げられる。このため、古くより科学熱輸送技術に関する検討はなされてきているものの比較的高温を対象温度域とした例が多く、排熱の2/3を占める80℃以下の低温熱エネルギーに対して有望な反応系の探索が十分であるとは必ずしもいえない。そこで、本テーマではこの低温熱エネルギーにターゲットを当てた化学物質の混合を利用した化学熱輸送技術を新たに提案し、その可能性についての研究開発を実施した。具体的には、混合を利用する熱輸送技術の提案と熱力学データに基づく最適混合系の抽出および冷熱生成実験結果に基づく本法の有効性の評価を行った。

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