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内分泌かく乱物質 第1回 領域シンポジウム  37-51
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低用量ダイオキシン類による内分泌かく乱作用と健康リスク
遠山 千春1)2)
1) 国立環境研究所·環境健康研究領域
2) 国立環境研究所·ダイオキシン·内分泌かく乱プロジェクト
1999年3月にダイオキシン関係閣僚会議において、ダイオキシン対策の基本指針が定められました。これを受けて、1999年6月には、様々な行政施策に加えて、我が国における耐容一日摂取量(4 pg TEQ/kg 体重/日)の設定がなされ、環境への放出の削減、今後の調査研究を積極的に行い、国内外に情報を発信することなどが謳われました。ところで、1998年5月にジュネーブの世界保健機関で開催されたダイオキシン類の耐容一日摂取量を見直すための専門委員会に参加して痛感したことは、我が国からの行政面及び学術面でのダイオキシンに関する情報発信がきわめて貧弱なことでした。議論のたたき台となる文書に盛り込まれた日本の耐容一日摂取量は、1984年当時の100 pg/kg/日という値であり、また、日本から発信された引用文献は極めて限られたものでした。前者の行政面における発信は、「国民にわかりやすい情報の公開」という行政方針にもとづき、試行錯誤しつつも前進しています。他方、学術面における発信の遅れは、日本全体をみると今しばらく改善に時間がかかりそうです。その理由は、ダイオキシンという「史上最強」の毒物を用いた研究をすることに伴って発生するゴミや実験排水·排気などの安全性の面で多くの大学や研究所には適切な施設が無く、研究を遂行しにくい状況にあるからです。このような状況の下で、いろいろと制約はあるものの、我々の研究所には、1996年にダイオキシンを安全に扱うことができる実験施設が設置されました。上述の背景を踏まえて、私たちの研究プロジェクトは構想されるに至りました。幸いにして、戦略的基礎研究のプロジェクトの一つとして採択していただき、本研究を開始することができたのです。

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