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内分泌かく乱物質 第1回 領域シンポジウム  1-12
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内分泌かく乱物質と生殖機能
—環境ホルモンと人類の未来—

堤 治1)2)3)
1) 東京大学大学院医学系研究科生殖発達医学専攻産科婦人科分子細胞生殖医学
2) 東京大学附属病院女性外科
3) 科学技術振興事業団CREST
二十世紀の科学文明は人類に未曾有の繁栄をもたらすと同時に、地球温暖化や環境汚染等の大きな問題を生じた。地球環境の汚染の大きな部分を占めているのが内分泌かく乱物質(環境ホルモン)といえよう。環境ホルモンは「動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれる正常なホルモン作用に影響を与える外因性の物質」と定義される。自然界に存在する植物性エストロゲンや医薬品(合成エストロゲン)なども該当するが、主には環境汚染物質などで微量でもホルモン作用を有する化学物質を意味する。その多くはエストロゲン作用に関係する。「奪われし未来」1に示されたよう環境ホルモンは野生動物の生殖異変を引き起こし、動物種によっては絶滅の危機に瀕しているものもある(図1)。実験動物でも生殖機能を中心に従来の毒物学では理解できない、low dose effect2の研究が開始されている。ヒトへの健康影響の有無は不明な点が多いが、内分泌撹乱物質は蓄積性が高く、食物連鎖の頂点にある人類において生殖機能を含めた人体への影響を解明すべき時に至っていると考えられる。実際様々な内分泌攪乱物質がヒトの血液のみならず、卵胞液、精液、羊水等に検出され、その作用究明の重要性が認識される。また従来の毒性量に比べ胚や胎児等で報告される微量(環境中ないしヒト体液中濃度に相当)における作用low dose effectについても注目され始めている。生殖医療に携わる立場から、最近の研究動向を含めて報告したい。

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