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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  873-882
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環境低負荷型の高分子物質生産システムの開発
土肥 義治1)
1) 理化学研究所
生物の物質生産機能を利用して、再生可能な生物有機資源(糖、植物油など)や二酸化炭素から優れた性能や特異な機能をもつ新しい高分子材料を創製する科学技術を開拓することは、持続可能な社会を実現する上で重要な課題である。地球上の生物は、生命活動を営むために、核酸、タンパク質、多糖、ポリエステルなど多種多様な高分子物質を合成している。これらの生体高分子は、さまざまな機能を発現する生体材料として重要な役割を果たしたのちに、体内代謝や環境微生物によって分解され、最終的には二酸化炭素と水とに代謝される。その二酸化炭素を植物や藻類が再び高分子物質に変え、さらに動物がそれを利用するという、地球上の炭素サイクルが確立されている。しかしながら、化石資源を大量に消費する人間活動によって大気中の二酸化炭素濃度が徐々に増大しており、地球環境への影響が心配されている。石油などの化石資源に依存する現行の高分子物質生産体系では、究極的には化石資源を二酸化炭素に転換し、大気中の二酸化炭素濃度を増加させることになる。21世紀には、生物有機資源(バイオマス)や二酸化炭素を原料とする高分子物質生産体系(生物化学工業など)を発展させる必要がある。
このような背景から、地球環境と調和する持続可能な人間社会を実現するための科学技術の一つとして、微生物の物質生産機能を利用して、生物有機資源や二酸化炭素から人間の生活や産業活動に有用な高分子物質を生産する基盤科学技術を確立するための研究課題を提案した。幸いにも、平成7年度の「戦略的基礎研究、環境低負荷型の社会システム」の一研究課題として採択され、平成7年度末から「環境低負荷型の高分子物質生産システムの開発」を目標に研究プロジェクトを開始した。5年間のCREST研究では、微生物の物質生産機能を利用して、再生可能な植物系資源(糖、植物油)から優れた性能をもつ生分解性高分子物質を生産する新産業の基盤科学技術を開拓することを目的とした基礎研究を実施した。とくに本研究では、核酸、タンパク質、多糖、ポリイソプレノイドにつづく第5の生体高分子として注目され始めたバイオポリエステルについて重点的に研究を進めた。バイオポリエステルの生合成、関連酵素遺伝子の取得と機能解析、生合成酵素の高次構造解析、高生産微生物の分子育種、効率的生産法の開発、バイオポリエステルの高性能材料化、生分解速度の制御技術開発、バイオポリエステル分解微生物の単離と解析という一連の基礎研究を生物科学と高分子科学との異分野の研究者の共同作業で行った。

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