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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  749-769
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脳内光受容とサーカディアンリズム
深田 吉孝1)
1) 東京大学大学院理学系研究科
チーム全体ならびに深田グループ
多くの生物が持つ概日時計は、そのリズム位相を外界の周期的な環境変化に応じて調節できるという特徴をもつ。概日時計の同調因子としては温度変化や摂餌など様々なものが知られているが、なかでも、全ての生物に共通で重要な同調因子と考えられるのが光、すなわち外界の明暗周期である。本研究では、概日時計がどのようにして外界の明暗周期に同調するのか、どのようにして約24時間周期で自己発振するのか、その分子メカニズムを明らかにすることを目標とした。概日時計システムの解析にむけた研究には、主にニワトリ松果体を材料として用いた。これは、ニワトリ松果体細胞が単離培養条件下においても光感受性をもち、更にメラトニン分泌の顕著な概日リズムを示すため、細胞レベルでの概日時計システム、特に光入力系の分子解析に適しているからである。
まずはじめに、私共が見出したニワトリ松果体特異的に発現する光受容体ピノプシンの大量発現系を構築し、その光反応特性を網膜の光受容分子と比較解析した。その結果、ピノプシンは錐体型光受容体と桿体型光受容体の両方の機能を併せ持つユニークな光受容体であることを見出した。一方、ピノプシン遺伝子の転写が光刺激と共に誘導されることを見出し、これまで動物遺伝子では未知であった光誘導に関わるシスエレメントの同定を試みた。その結果、ピノプシン遺伝子上流のEボックス配列CACGTGが光転写誘導に必須であることを突きとめた。次に、ピノプシン下流の光情報伝達経路を調べ、ピノプシンが3量体G蛋白質である網膜桿体型トランスデューシン(Gt1)ならびにG11と共役し得ることを明らかにした。Gt1は百日咳毒素感受性のG蛋白質であり、従来の薬理学的知見と考え併せると、松果体のGt1経路はおそらく光によるメラトニン分泌の急性抑制効果を担うと考えられた。一方、ニワトリ松果体G11αのcDNAクローニングや蛋白質の局在·性状解析などから、G11を介する情報伝達経路が概日時計の位相シフトを引き起こすことを示した。

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