TOP > 巻一覧 > 目次一覧 > 書誌事項


戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  489-497
[PDF (99K)] [成果一覧


フェムト秒領域の光反応コントロール
山内 薫1)
1) 東京大学大学院理学系研究科
分子が波長の短い紫外線を吸収したり、強い光子場と相互作用すると、その化学結合が切断され、よりサイズの小さい分子や原子に解離する。したがって、この解離過程を理解することは、化学反応を光でコントロールするための貴重な第一歩である。本プロジェクトは、光の強度が比較的低い場合における分子内振動エネルギー再分配(IVR)の機構を解明するとともに、光の強度が分子内のクーロン場の大きさ匹敵する場合における光と分子の混合状態の理解を目指した。そして、光パルスの持つ強度、波長、パルス幅、2つのパルスの間の時間差をパラメータとして取り扱い、実験と理論の両者の立場から、IVRの詳細な解明とそのコントロール法の提案、強い光子場における分子の変形現象の発見と追跡、さらには、光子場による分子配向、変形、イオン化の競合過程の同定を行い、光による反応コントロールへの指針を与えた。その過程において短パルス極端紫外レーザー光源、短パルス電子回折装置、質量選別運動量画像法、代数論的振動力場展開法など新しい実験装置や実験手法の開発に成功した。
主な成果は、大別して、(1)強光子場中の光反応および分子構造制御、(2)短パルス極端紫外(XUV)域光源の開発と反応制御への応用、(3)摂動領域におけるIVR制御のための分光実験および理論の3つに分類される。特に、強光子場中の光反応制御に関しては、「タンデム型質量分析装置」、「パルス電子回折装置」、「極端紫外域分光システム」、「超光子場発生のための光コンプレッサー」の製作を完成させ、強光子場中での分子の偏向、変形、爆発などの様々な現象を系統的に調べた。そして、「準定常フロケ法に基づくドレスト状態ダイナミクス」に関する理論計算や「代数アプローチによる振動ダイナミクス」、「強光子場中における分子内電子·核ダイナミクス」に関する理論研究を展開した。

[PDF (99K)] [成果一覧

Copyright (c) 2002 科学技術振興事業団