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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  469-487
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高次構造を有する有機分子の極微細触媒構造を機軸とする立体選択的構築
福山 透1)
1) 東京大学大学院薬学系研究科
近年の有機合成化学の現状を眺めてみると、数多くの優れた反応が開発され、さらにそれらを用いた複雑な天然物の全合成が多く報告されるようになってきている。したがって現在の有機合成の力をもってすれば、既存の反応をうまく組み合わせるだけで、複雑な化合物を比較的容易に全合成できるかのように見える。しかしながら、現在の有機合成化学の力量では、多くの場合、僅か数mgの化合物を合成することはできても、充分な物質供給という意味での役割を果たすまでには成熟していといえる。特に、医薬開発の領域においては、これまでにもまして不斉中心を持った高次構造有機分子が多くなってきており、近い将来、純粋な光学活性体としての上市が必要とされるのではないかという点を考慮すると、不斉合成を基盤とした高次構造分子の構築がますます重要になってくる。
本研究は、東京大学大学院薬学系研究科の福山透をリーダーとして、福山らのグループ、同研究科の柴崎正勝教授および大阪大学産業科学研究所の笹井宏明教授らのグループ、また、奈良先端科学技術大学院大学の古賀憲司教授らのグループがそれぞれサブグループを形成し、医薬的に重要な、不斉中心を含んだ高次構造分子を立体を高度に制御しながら効率的に構築することを目的として研究を開始した。近年、我が国を中心とした不斉合成反応の目覚ましい進展には目を見張るものがあり、光学活性な医薬合成に実用化されている例が増えてきている。しかし、その中でも、触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応は比較的困難であり、実用化されている例は極めて稀である。この点に関しては、柴崎、笹井らのグループによって、異種金属含有不斉触媒を用いた炭素-炭素結合生成反応に関する基礎的な検討を行い、工業化にも適用可能な触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応の開発を行った。また、古賀らのグループではキラル塩基を用いる不斉触媒反応の開発に関する検討を行った。福山らのグループでは、それらの基礎的検討によって確立された新規不斉反応を基盤として、高次構造有機分子を独自性の高い合成経路によって合成することを計画した。

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