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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  443-468
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オキシジェニクス(高分子錯体)
土田 英俊1)
1) 早稲田大学大学院理工学研究科
「オキシジェニクス(Oxygenics)」とは、酸素の分子科学とその利用技術全般、それらから派生する材料や広範な応用のすべての総称である。酸素は生命の根幹であり、人類の安全保障にも密接に関連している。つまり、体内における酸素の役割の再現への挑戦と、資源として大気酸素を利用する次世代核心技術の確立が“オキシジェニクス”なのである。
このプロジェクトは高分子錯体が構築する極微小特異空間を利用した「錯体部の配位活性制御と革新的化学反応の構築」を研究目標とした。例えば酸素架橋の複核錯体を介し一段階の4電子移動を生起させると、従来反応しないとされてきた化合物でも活性化できるようになり、それらを巨大分子に成長させる発明、つまり、新しい分子変換法の誕生となった。興味深いことに、大気圧下、室温、空気の吹込みだけでこの種の反応(直鎖高分子量体生成)が進行する。他方、分圧(濃度)差だけで簡単に結合脱着を観測できるヘモグロビンの例では、酸素配位は電子移動を生起しない。そこで酸素結合席のポルフィリンだけを取り出し、電子移動抑制の仕掛け(グロビンの役割代替)を備えると、水中でも酸素配位が可能となり、血液の役割代替ができる酸素輸液が実現した。
オキシジェニクスの基礎科学を確立するだけでなく、人類生存に役立つ広範な科学技術展開の突破口(生命/エネルギー/環境の諸科学 に跨る新領域)として、具体的利用を定着させる努力に研究目標を置いた。得られた成果は社会との接点も極めて明確な対象であり、産業界への波及から具体的な社会貢献ヘ繋がる。研究開始当初から、「多電子移動と分子変換」および「電子移動抑制と分子機能」に分けた展開を進めてきたが、その概要は次の通りである。

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