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戦略的基礎研究推進事業 平成7年度採択研究課題 研究終了報告  197-210
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Fc受容体を介する生体防御システムの解析
高井 俊行1)
1) 東北大学加齢医学研究所
【背景】Fcレセプター(FcR)は, 免疫複合体を認識し, エフェクター細胞の活性化あるいは抑制を行うことで生体防御系を調節する重要な分子群である. 研究代表者はFcRγ鎖およびFcγRIIBの欠損マウス作製により, アレルギー反応においてFcRが中心的役割を担っており, 免疫応答にはFcγRIIBを介する負のフィードバック機構が存在することを世界に先駆けて示した. これによりアレルギー疾患はIgEによるエフェクター細胞の活性化機構のみを考えるのでなく, IgGとFcγRIIBによる, 細胞活性化や抗体産生を抑制するシステムの重要性を新たに認識すべきであることが示された. またIgEとそのFcεRIとの解析, IgAとFcαRIの生理的重要性に関する研究も進展させる必要がある. さらに, 研究代表者らが見いだした新規FcαR様分子(現在ではPaired Immunoglobulin-like Receptor, PIRと呼ばれている)の生体防御システムの中での機能にも興味が持たれる.
【研究のねらい·着眼点とコンセプト】生体防御システムにおいて抑制的機能を担っているFcγRIIB, および逆にIgGを介して正の働きをするレセプターであると考えられるFcγRIIIと複数の活性化型FcRの共通シグナルアダプター分子であるFcRγの欠損マウスを用い, これらの炎症·アレルギー誘発, 自己免疫に対する応答能を解析することで, 生体防御調節機構の分子および細胞のネットワークを解明し, 更にこの成果を踏まえてアレルギー疾患, 自己免疫疾患の発症を制御する新しい方法を開発する.
【将来展望】FcRの研究を通じ, 個体の免疫反応の機構を分子レベルで理解することにより, 有効な炎症·アレルギー制御方法の開発が行えることや, 代表者らが見いだしたPIRを含む分子群である新規Immunoglobulin-Like Receptor (ILR)分子群の生理機能とFcRの機能の相違点などが明らかになることが期待され, Igスーパーファミリーに属する分子群の中でのFcRファミリー, ILRファミリーの存在意義にせまる, 有意義な研究に発展し得る.

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