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「生体防御のメカニズム」平成8年度採択課題終了シンポジウム  6-6
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「ヒトプロト型c-Ha-rasトランスジェニックラットの乳腺発がん高感受性とそれを利用した環境発がん物質中期検索法の開発」
津田 洋幸1)
1) 国立がんセンター研究所
環境においてヒトが実際に曝露される低用量域における発がん物質を検出できる検出モデルを確立する目的で、ヒト正常型c-Ha-ras遺伝子が3コピー導入されたトランスジェニックラット(Hras 128ラット)を作製し、発がん感受性実験を実施した。その結果、このトランスジェニックラット(Tg)は乳線を標的とする発がん物質のMNU、DMBA、PhIPを50日齢時に1回投与すると、いずれにおいてもわずか8∼12週後に全例に乳腺がんが多発し、著しく発がん高感受性であることがわかった。その機序の解析を目的として、発癌物質の標的と考えられる新生乳管先進部のterminal endbud(TEB)の数をwhole mount標本にて計測したところ、49日齢以後に雌雄ともTgでは野生型より多く残存し、成熟による自然退縮が遅延していることが分かった。49日齢雌のTgのTEBを含む乳腺組織ではc-mycの発現量が野生型の2∼3倍に亢進しており、TEBでは活性型MAPキナーゼの増加が認められた。したがって、TgではTEBの過剰残存が認められ、その原因としてRas-MAPK系の活性化が寄与していると考えられた。またがん組織では導入遺伝子の変異と活性化ras蛋白の増加がみられた。

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