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「脳を知る」・「脳を守る」合同シンポジウム要旨 脳の機能とその異常  7-7
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活性酸素による脳·神経細胞の障害とその防御機構
中別府 雄作1)
1) 九州大学生体防御医学研究所·脳機能制御学分野
脳·神経細胞はその個体の生涯を通して生存し機能する必要があるが、分裂能を欠くため加齢に伴う蓄積的な細胞障害により変性脱落する危機に曝されている。このような危機に対応するためにヒトを始めとする高等動物は、多様な脳·神経細胞維持機構を発達させてその機能を保持していると考えられる。脳·神経細胞が機能を発揮する上で不可欠なエネルギーは、大部分がミトコンドリアでの酸素呼吸により供給される。ところが、酸素呼吸では常時反応性の高い活性酸素が発生するため、脳·神経細胞はその機能発現の結果として常に活性酸素による酸化障害の危機に曝されている。
我々は、これまで「DNAの酸化損傷とその防御機構」について研究を進め、多くの生物が酸化されたDNAを修復する機構とそのヌクレオチド前駆体の酸化体を分解、排除する機構を備え、活性酸素による細胞障害に対抗していることを明らかにしてきた。脳·神経細胞の核DNAは複製されないことから、脳·神経細胞の生存と機能発現には核ゲノム情報の維持が必須であり、さらにエネルギー供給源を確保する上でミトコンドリアDNAの維持も重要である。我々は筋萎縮性側索硬化症患者の脊髄前角細胞やパーキンソン病患者の中脳黒質緻密層の神経細胞で酸化塩基「8-オキソグアニン」が蓄積する事、さらにDNA修復酵素群の発現が変動する事を明らかにした。DNAの酸化損傷の防御機構の異常が脳·神経変性疾患の発症に関与する可能性が示唆される。

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