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「脳を知る」・「脳を守る」合同シンポジウム要旨 脳の機能とその異常  6-6
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老化脳における神経の可塑性制御の分子基盤
森 望1)
1) 国立長寿医療研究センター分子遺伝学研究部
21世紀は「脳の世紀」であり、また「長寿の世紀」でもある。超高齢化社会における老人の『脳を守る』ために、老化脳が若齢脳と何が異なるか、その加齢変動とその分子背景を理解しなければならない。老化脳では神経の応答性、可塑性の減退が顕著である。シナプス可塑性のような機能的可塑性も、また、神経ネットワーク再編成能力のような構造的可塑性も老化脳で下がる。その原因究明のために、我々の「老化脳可塑性」戦略研究チームでは、(1)神経構造可塑性分子の構造と機能、(2)その神経特異的遺伝子発現の分子機構、(3)神経活性化シグナルにかかわるアダプター分子の研究を進め、さらに(4)それらの老化脳における加齢変化を解析した。その結果、神経の構造可塑性分子SCG10ファミリー分子はいずれも微小管崩壊活性をもつ、その崩壊活性はリン酸化により抑制される、その発現が視覚野可塑性に応じて変動することを明らかにした。また、SCG10機能関連分子を探索し、微小管-神経膜小胞関連分子を同定した。さらに、神経特異的遺伝子の転写メカニズムを解明し、また神経特異的ターゲッティングウイルスの開発へ応用した。神経特異的シグナルアダプターN-Shcを単離し、それが脳内での主要なBDNF-TrkBシグナル応答分子であるばかりか、従来想定されたGrb2/SOSルート以外に新たなシグナルを流しうることを明らかにした。また、p66-Shcが高等哺乳動物における長寿命遺伝子となることが指摘されたが、我々もp66-Shcのシグナル機構を解析するとともに、その老化·寿命制御への可能性を探索した。

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