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「脳を知る」・「脳を守る」合同シンポジウム要旨 脳の機能とその異常  17-17
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異常蛋白質の凝集と神経細胞の空胞形成·細胞死をつなぐ分子の同定
垣塚 彰1)
1) 京都大学生命科学研究科高次生体統御室
これまで、神経変性疾患は、疾患ごとに特有の障害部位とその結果として特有の症状(痴呆·運動失調·異常運動·筋力低下等)を示し、多くの疾患に当てはまる統一的な発症機構に関わる概念·分子機構を導き出すことはできないと考えられてきた。しかし、近年、変性しつつある神経細胞内に異常蛋白の凝集物や形態的に類似する空胞がかなり普遍的に存在することが判明し、神経が変性·消失する過程には、似通った分子機構が存在するという考えが広まってきた。本講演では、これまで我々が行ってきた遺伝性神経変性疾患の発症メカニズム、すなわちハンチントン舞踏病·Machado-Joseph病(MJD)等の原因となる伸長したCAGリピートが作り出すグルタミンリピート(ポリグルタミン)によって引き起こされる神経細胞の死·変性の分子解析を紹介し、これらの変異が生み出す生化学的実体(細胞死のシグナル伝達)について議論する。さらに、伸長したグルタミンリピートを複眼に特異的に発現させたトランスジェニック·フライの解析から得られた知見を紹介し、合わせて、神経変性疾患を総括的に治療する戦略を考察する。

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