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「脳を知る」・「脳を守る」合同シンポジウム要旨 脳の機能とその異常  16-16
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Caチャネル遺伝子の変異と神経疾患
田邊 勉1)
1) 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学系高次機能薬理学専攻
α1ACaチャネルは脳全体に広く発現しており、中枢および末梢神経系の伝達物質放出機構において中心的役割を果たしている。近年、本遺伝子の種々の変異が多彩な神経疾患とリンクしていることが明らかにされてきた。脊髄小脳失調症6型(SCA6)はその一つであり、本邦の遺伝性脊髄小脳変性症においてSCA3についで多く社会的ニーズの高い難治疾患である。我々はSCA6の病態とチャネル遺伝子変異との関係を明らかにするとともに、変異α1Aチャネルおよび共存する他のタイプのCaチャネルの発現調節、制御機構の活用により神経細胞の変性脱落の阻止をはかることを目的に研究を行っている。まずα1ACaチャネルのポリグルタミン(ポリQ)を含む領域を認識する抗体を用いて免疫組織化学的検討を行ったところ、SCA6の患者プルキンエ細胞の細胞質内にα1Aチャネルの凝集体が見い出された。一方、SCA6患者α1AチャネルcDNAをPCRクローニングにより取得しこれを培養細胞を発現させ、電気生理学的特性を解析したところ、定常状態の不活性化曲線においてポリQの長さが長くなるに従って曲線が左側にシフトすることがわかった。すなわち、ポリQの長さが長くなるに従ってチャネルは不活性化しやすく、このチャネルを通って流入するCa量が減少し、これがSCA6の疾患症状の原因であることが示唆された。

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