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「脳を知る」・「脳を守る」合同シンポジウム要旨 脳の機能とその異常  13-13
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遅発性神経細胞死の分子機構
桐野 高明1)
1) 東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻脳神経外科学分野
我々は遅発性神経細胞死の分子機構を解明するにあたり、3つの分子に着目した。第1に、脳内特に海馬CA1細胞で高発現しているcalcineurinである。本研究ではcalcineurinが培養系の神経細胞の脆弱性を増強すること、細胞死にいたるまでにcalcineurinの下流でp53を介していることを明らかにした。
第2に、ubiquitn-proteasomeである。我々は以前得た、一過性前脳虚血後の海馬CA1組織でubiquitin-proteasome系の機能低下を示唆する知見に基いて、本研究では、培養神経細胞でproteasome機能を低下させると細胞死が誘導されること、一過性前脳虚血後の海馬CA1組織で確かにproteasome活性が不可逆的に低下し、その分子機序として、proteasomeのsubunitである20sとPA700から26sへの再会合が障害されていることを示した。
第3に、caspase-3である。今回の研究では、マウス全脳虚血モデルを作成し、caspase-3KOマウスに対して一過性の全脳虚血を誘導したところ、caspase-3KOマウスでは海馬CA1細胞の細胞死が有意に減少することを明らかにした。

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