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「極限環境状態における現象」研究領域シンポジウム  74-76
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新しい量子自由度·軌道の動的構造の解明
遠藤 康夫1)
1) 東北大学·金属材料研究所
広い運動量とエネルギー空間を測定でき、電荷の励起を測る手段を用いて、電荷との結合を介して、他の電子の自由度、スピンと軌道の動的構造を知る為に共鳴X線非弾性散乱の実験を行っている。この研究の為にX線分光器をSPring-8の原研ビームラインBL11XUに建設し、d電子の軌道秩序を示すペロブスカイト型LaMnO3の共鳴X線非弾性散乱を測定した。
エネルギー分解能0.5∼eVの条件で、幾つかの入射エネルギーで非弾性散乱を測定し、入射エネルギーをMnのK吸収端近傍に合わせた時にのみ、2.5eVと8eV、11eVに3つのピークが現れることを発見した。(図1)共鳴ピークのエネルギーの運動量依存性は、(h,h,0)と(h,0,0)の2つの方向のみの測定ではあるが、弱い事を見出した。それぞれのピークの起源は光学伝導度の測定結果との関連で、8eVと11eVのピークは局所的な電荷移動型の励起と考えられる。(8eVのピークは酸素2p軌道からMn 3dの非占有軌道への遷移、また11eVのピークは酸素2p軌道からMn4s或は4p軌道への遷移であろう。これに対し、2.5eVのピークは下部Hubbardバンド(LHB)から上部Hubbardバンド(UHB)への遷移と考えられる。さらに、偏光依存性の測定から、2.5eVの散乱強度は方位角(散乱ベクトルまわりの試料回転)の関数として180度周期の振動が観測されたので、軌道励起を取り入れた理論計算と定性的な一致を示している。

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