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「極限環境状態における現象」研究領域シンポジウム  64-65
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低次元異常金属の開発
—パイロクロア·スピネル化合物の異常物性—

佐藤 正俊1), 安井 幸夫1), 吉居 俊輔1), 飯久保 智1), 影山 健友1)
1) 名大大学院理学研究科
本ポスターではA2B2O7の一般式で表されるパイロクロア型化合物とAB2O4もしくはAB2S4、AB2Se4で表わされるスピネル型化合物等に対して行った異常物性探索の結果について発表する。これらの系に共通した特徴は、頂点を共有した正四面体の3次元ネットワークが存在することである。前者においてはA(=Y,Bi,Tlおよび稀土類元素等)とB(主に遷移金属元素)がそれぞれ独立に、後者の化合物系ではB(主として遷移金属元素)が同様の構造のネットワークを構成している。その様子をパイロクロア系について図1(a)に例示した。このような構造上の特徴が物性へ大きな影響をもたらす。第一に、正四面体の各面が正三角形をしていることに注目すると、その頂点に位置する磁性元素の磁気モーメントが反強磁性的に並びたがるときにやっかいな事情が生じることがわかる。図1(b)に示したように、2つのモーメントは反平行に揃いうるが、3つ目はどう並ぶか決まらない。この事情はフラストレーションという言葉で表わされる。このフラストレーションがもとでモーメントが秩序を持たない不安定状態のまま大きくゆらぐ物質系が実現する。このような系が金属となる場合、銅酸化物高温超伝導体のものとよく似た電子状態が実現する。このことを利用すると銅酸化物系の物性を理解する重要な情報が得られる。

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