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「極限環境状態における現象」研究領域シンポジウム  15-16
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準二次元ルテニウム酸化物のスピン三重項超伝導
前野 悦輝1)2)
1) 京都大学·国際融合創造センター
2) 京都大学大学院·理学研究科
超伝導は低温で伝導電子が1∼100ナノメートル程度の広がりをもったクーパー対と呼ばれる対をつくり、一種のボーズ·アインシュタイン凝縮を起こす量子凝縮現象である。電子は古典的描像では自転に相当する固有角運動量(スピン)をもっているが、これまで知られてきた超伝導体はスピンが互いに逆向きの電子対からなる、合成スピンがゼロの「スピン一重項」が担っている。この点では銅酸化物の高温超伝導体も例外ではない。これに対して、スピンが同じ方向で合成スピン1の「スピン三重項」のクーパー対も原理的には可能である。それではスピン三重項の超伝導は実現するのであろうか?またそれはどのような性質を示すのであろうか?
本研究グループが超伝導を発見したルテニウムの酸化物Sr2RuO4は、図1のとおり銅酸化物の高温超伝導体と同一の層状結晶構造で、1.5ケルビン以下で超伝導になる。CRESTの研究プロジェクトを通じて極めて純良な単結晶の育成に成功し、その超伝導が画期的なスピン三重項であることを遂に実験的に証明することができた。そしてさらに、その超伝導状態の詳細に渡っての解明や、スピン三重項特有の新しい超伝導現象の開拓を目指して研究を進めてきた。

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