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研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001”  9-9
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Ca2+透過性AMPA型グルタミン酸受容体を介するグリアーシナプス間の機能連関
小澤 瀞司1)
1) 群馬大学医学部
イオンチャネル型グルタミン酸受容体のうち、AMPA受容体は中枢神経系の大部分の興奮性シナプスにおいて時間経過の早いシナプス伝達に関与する受容体であることが知られている。AMPA受容体にはGluR1-GluR4の4つのサブユニットが存在し、GluR2を含むサブユニット構成をもつ受容体が、外向き整流、Ca2+非透過性(I型)であるのに対して、GluR2を含まないサブユニット構成の受容体は内向き整流、Ca2+透過性(II型)である。ニューロンにおいては、II型受容体は一部のGABA性介在ニューロンに存在するのみであるが、グリア系細胞ではこの受容体は広範に存在し、特に、小脳ベルクマングリアには、GluR1とGluR4から成る受容体が高密度に存在する。このグリア細胞におけるCa2+透過性受容体の機能的意義を明らかにするために、ラット小脳において、GluR2組換えアデノウイルスベクターを用いて、Ca2+透過性AMPA受容体をCa2+非透過性受容体に変換し、ベルクマングリア自体の形態と小脳シナプスの機能に生じる変化を解析した。GluR2の強制発現によるCa2+透過性の喪失は、シナプスを包囲しているグリアの突起を退縮させるとともに、平行線維及び登上線維-プルキンエ細胞間の興奮性シナプス伝達の持続時間を顕著に遷延させ、さらに登上線維によるプルキンエ細胞の多重支配をもたらした。これらの知見は、グリア細胞におけるCa2+透過性AMPA受容体が、グリア-シナプス間の機能連関において、重要な役割を担うことを示している。

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