JST200206 : 研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001” 9-9

カルシウムチャネルによるシナプス伝達制御

八尾寛¹⁾

1) 東北大学大学院生命科学研究科

シナプスにおける情報伝達の強さは、シナプス前終末のCa²⁺チャネルにより制御されている。演者らは、海馬のシナプス前終末のCa²⁺濃度を単一シナプスのレベルで計測する手法を新たに開発した。海馬苔状線維終末には多彩なCa²⁺チャネルサブタイプが発現していると同時に個々のシナプス前終末においてCa²⁺チャネルサブタイプの発現比率に大きなばらつきがあることを見出した。これらのサブタイプがそれぞれ伝達物質放出と連関していることから、Ca²⁺チャネルを介して情報伝達の強さが多様に調節されていることが示唆される。シナプス前終末におけるCa²⁺チャネルサブタイプの表現系に多様性があることが、海馬における情報処理に重要な意義があることを論ずる。