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研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001”  8-8
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フェロモン記憶とシナプスの可塑性
市川 眞澄1)
1) 東京都神経科学総合研究所
シナプスの可塑性と記憶との関わりを明らかにする目的で、フェロモンの記憶をつかさどる鋤鼻系副嗅球内の相反シナプスという機能的に重要なシナプスに注目して、フェロモン刺激とシナプスの可塑性との関連を総合的に解析している。その一つとして培養系を利用した研究を進めている。胎生期のラットから鋤鼻ニューロンを調整した後培養すると小塊を形成する。この小塊は鋤鼻感覚上皮様の構造を示し、線維束を伸ばす。また、培養副嗅球ニューロンでは、シナプス伝達にかかわる物質の薬理学的処理後におこる形態変化を共焦点レーザー顕微鏡によりリアルタイムイメージングで解析した。この結果、細胞内カルシウムの上昇したニューロンでは、樹状突起上のスパイン様構造に形態変化が認められた。さらに、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養を試みた結果、単独培養に比べて有意に副嗅球のTH陽性ニューロンが増加することが認められた。これは、鋤鼻ニューロンと副嗅球ニューロンの共培養系が機能的に働いていることを示唆する結果である。これらの結果から、今後鋤鼻系ニューロンの共培養系を用いてシナプス可塑性の研究をすることが可能となった。

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