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研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001”  3-3
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脳膜による中枢神経機能の調節
裏出 良博1)
1) 大阪バイオサイエンス研究所
内因性睡眠物質プロスタグランジン(PG)D2の生合成を行うリポカリン型PGD合成酵素(L-PGDS)は脳膜に局在する。そして、2種類のPGD2受容体の一つであるDP受容体も前脳基底部の脳膜に局在する。DP受容体を刺激すると局所の細胞外アデノシン濃度が上昇し、アデノシンA2A受容体を介して視索前野の睡眠中継神経核(VLPO)の活性化を促す。VLPOの活性化は、おそらくGABAあるいはガラニン系抑制神経の投射を通して、後部視床下部のヒスタミン系覚醒中枢(TMN)の活動を抑制して脳全体をノンレム睡眠に導くと考えられる。L-PGDS、DP受容体、アデノシンA2A受容体、ヒスタミンH1受容体、それぞれのKOマウスの基礎睡眠はほとんど変化しないが、L-PGDSとDP受容体のKOマウスは共に断眠後のノンレム睡眠リバウンドが起こらないので、L-PGDS·DP受容体系はノンレム睡眠の恒常性の維持機構に関与すると考えられる。さらに、L-PGDSは活発に脳脊髄液に分泌され、脂溶性物質の結合と輸送を行なうことが予想され、脳脊髄液循環機能の指標としても有効である。

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