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研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001”  3-3
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大脳皮質脳室帯からの細胞移動開始を司る新しい分子機構
佐藤 真1)
1) 福井医科大学
Periventricular heterotopia病では、大脳皮質形成時に神経細胞が脳室帯から移動できず、その場に留まったままであることが特徴である。アクチン結合蛋白質Filamin 1の異常が本疾患の原因であることが最近明らかとされたが、この事実はFilamin 1が大脳皮質形成時において脳室帯からの神経細胞の移動に必須であることを示している。我々は発生期大脳皮質の脳室帯に発現する新規分子FILIP(Filamin-interacting protein)を同定し、FILIPがFilamin 1と結合し、Filamin 1の分解を促進することにより脳室帯からの細胞移動を負に調節していることを明らかとした。なお、FILIPにはshort formであるS-FILIPとlong formであるL-FILIPの2種類の分子種が存在し、L-FILIPはS-FILIPに比べて大脳皮質脳室帯における蛋白質発現量が多くFilamin 1分解促進作用もより顕著であった。大脳皮質脳室帯からの細胞移動開始メカニズムは従来不明であったが、少なくともこれらFILIPsが細胞移動を負に調節すること、すなわち細胞を脳室帯に歩めていることが明らかとなった。そして、いわばそのブレーキがはずれることにより細胞移動が開始する可能性が示唆された。

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