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研究領域「脳を知る」のシンポジウム “脳神経科学の最先端2001”  2-2
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短潜時でおこる視覚的追跡眼球運動の神経機構
河野 憲二1)
1) 産業技術総合研究所
広い視野の視覚刺激が動くと、その動きを追いかけるような眼球運動が非常に短い潜時で起こる。視覚刺激が左右あるいは上下に動く場合には、追従眼球運動が起き、視覚刺激が前後方向(遠近方向)に動く場合は輻輳開散運動が起こる。これらの眼球運動が、どのような神経機構で起こるのかを調べた。サルの後頭頭頂連合野の一部MST(Medial Superior Temporal)野を神経毒であるイボテン酸で破壊すると、これらの眼球運動の発現に障害が現われた。また、MST野からニューロン活動を記録すると、動く視覚刺激に強く反応し、眼球運動に先行して活動を始めるニューロンが多数記録された。この結果は、MST野のニューロンが、短潜時でおこる視覚的追跡運動の発現に関与していることを示唆している。また、追従眼球運動の発現については、橋核、小脳傍片葉からニューロン活動を記録し比較することにより、眼球運動制御のために、大脳-橋-小脳の神経回路のそれぞれの要素がどのように働いているかを明らかにした。

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