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各種反応プロセスにおける磁気効果に関する研究
Vol. 1 (2000) p.68
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2) 有機微粒子·有機薄膜の光化学反応とその磁場効果
森田 浩1)
1) 千葉大学大学院自然科学研究科
  【A】研究概要
平成8年∼平成12年度の間、先ず、初年度に
(1)固相ポリマー薄膜中の光化学反応に対する外部磁場効果 の研究を、
次年度以降には
(2)気相光化学反応を利用した有機複合微粒子の作製とその磁場効果 の研究を行った。
それぞれの研究概要を以下に述べる。
【1】固相ポリマー薄膜中の光化学反応に対する外部磁場効果
固相ポリマー中での光化学挙動に対する外部磁場効果の研究は、これまで2,4-diisopentylthioxanthone (DITX)を増感剤としたBromo-and chloromethylated polystyrene(BCMS)とPoly(styrene-co-vinylbenzyl azide) (AZMS)の光橋かけ反応について研究し、外部磁場を印加すると光橋かけ反応効率が変化することを、既に、我々が報告している。そこで本研究では光開裂によりラジカルを発生する増感剤、即ち、Bis[2-(o-chloro-phenyl)-4,5-diphenylimidazole] (o-Cl-HABI) をBCMSポリマーに10wt%添加した薄膜を作成し、高圧水銀灯の光(UV-D33S フィルターを使用)を照射しBCMSポリマーの光橋かけ反応について研究した。その結果、光開裂により生成したイミダゾリルラジカルが他の場合(溶液中やポリスチレン中)とは異なり、BCMSポリマーから素早く水素原子を引き抜きイミダゾールとなることがUVスペクトルとけい光スペクトルの観測から判明した。この際生成したポリマーラジカルがBCMSポリマーの橋かけ反応を開始するが、外部磁場(0.1∼0.6T)を印加すると橋かけ反応効率が1∼3%減少することを発見した。反応過程を考察した結果、磁場はイミダゾリルラジカルの再結合過程ではなく、ポリマーラジカルや反応中間体として生成しうる塩素や臭素ラジカルの化学挙動に影響していることが結論できた。
【2】気相光化学反応を利用した有機複合微粒子の作製とその磁場効果
気相分子の光化学反応を利用して微粒子を形成させると(1)レーザ多光子過程により気相分子を高励起状態やイオン化状態に励起できるため種々の励起状態から異なる化学反応が開始でき、さらに(2)微粒子表面の特異な反応性を利用して新規な化学反応を引き起こすことが出来る。そこで気相分子から直接、微粒子を形成すれば新規な化学種が微粒子中に固定でき、新規物質が創製できる可能性がある。そこで、本研究では、先ず、気相分子から複合微粒子を形成する方法を開発し、次に、微粒子中や微粒子表面での化学反応に対して外部磁場がどのような影響を与えるのかを検討し、新規な物質を微粒子として選択的に創製する方法を開発することを目的とした。研究は次の様な順序で行った。

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