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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 940
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「脳を守る」平成10年度採択研究代表者
「ウイルス性脳障害の発症機構の解明と治療法の開発」

長嶋 和郎1)
1) 北海道大学医学部 教授
Abstract:  ウイルス性脳障害の発症機構を解明する為に、ヒト脳に進行性多巣性白質脳症を惹起するJCウイルスを主なターゲットとし、その脳組織特異性の研究を以下の2つのアプローチで行っている。
(1)JCウイルス受容体の研究
JC ウイルス(JCV)を人工的に作成して、粒子形成を電子顕微鏡で確認し、さらに人工ウイルスが哺乳類細胞に対してのベクターとしての役割を持つことも証明した。またJCVはヒトO型赤血球を凝集させるが、この人工ウイルスも赤血球凝集能を持ち、酵素処理することにより凝集作用は抑制されたことから赤血球への吸着は特定の糖鎖が関与することが明らかとなった。現在この人工ウイルスを用いてJCウイルス受容体の単離を進めている。
(2)神経特異的転写因子の研究
JCVの転写調節に関して以下の実験を行っている。病原型および非病原型の各々2種類の転写調節領域(早期および後期転写領域)の下流に発光蛋白を融合させたトランスジェニックマウスを作成している。また成人T細胞白血病の患者で進行性多巣性白質脳症の病変が高度であったことから、白血病の原因ウイルスであるHTLV-Iの構成蛋白TaxがJCVを活性化するということを証明した(J BiolChem, in press)。またこの活性化が神経系細胞特異的である機序を解明し報告した。現在はその転写活性化因子の同定を行なっている。

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