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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 928
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「脳を守る」平成9年度採択研究代表者
「老化脳における神経の可塑性制御の分子基盤」

森 望1)
1) 国立長寿医療研究センター 部長
Abstract:  神経軸索や樹状突起内の物質輸送の中核となる微小管(マイクロチューブル)の崩壊因子であるSCG10の新たな神経特異的ホモログ、RB3、SCLIPについても、同様の崩壊活性を確認した。神経可塑性にもっとも関連深いと思われるRB3についてそのリン酸化調節領域に特異的に結合する新たな分子を単離した。視神経再生誘導をかけるとRB3が一過的に誘導されることが判明した。BDNF等の神経栄養因子のシグナリングに係わるN-Shc/ShcCおよびその関連分子Sck/ShcBについて、全長構造を明らかにした。N-Shc/ShcCには従来予想された以上に新たなシグナルアウトプット領域があることがわかった。また、元のShcにアポトーシスにからむセリンリン酸化シグナルが入り、その部分の遺伝子欠損でマウスの寿命が延びると報告された。新たなアクチン結合蛋白質で神経細胞の突起先端に集約する分子を単離し、ClipinCと命名した。数々の神経特異的遺伝子の神経特異的な転写制御を決定づけるサイレンサーNRSについては、その制御因子NRSF/RESTの転写抑制の分子機構の一端を解明した。特に、N末のドメインで転写抑制補因子mSin3に結合し、その結果ヒストン脱リン酸化酵素HDACをリクルートし、クロマチン構造を変換して遺伝子発現を制御する分子機構が示唆された。また、NRSを利用した神経特異的ターゲッティングを可能とするアデノウイルスベクターを開発した。

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