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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 909
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「脳を守る」平成9年度採択研究代表者
「遅発性神経細胞死の分子機構」

桐野 高明1)
1) 東京大学大学院医学系研究科 教授
Abstract:  一過性脳虚血後の海馬遅発性神経細胞死はきわめて緩徐に進行し、受動的破壊による細胞死とは異なる。その上流では神経細胞特有の機構による細胞死の決定機構が働き、その間は、神経細胞死は可逆性で治療可能であり、最終的にアポトーシス共通の経路に達すると、不可逆に進行すると考えられる。アポトーシスの上流での神経細胞特有の分子機構を解明し、治療可能域を探ることが本研究のねらいである。これまでに大脳皮質培養神経細胞においてcalcineurinの高発現により、血清減少、Ca2+ ionophore刺激等のsublethalな刺激によって容易にcytochrome cおよびcaspase-3-like protease依存性のアポトーシスが誘導されることが明らかになった。また、大脳皮質培養神経細胞において、proteasome阻害剤によるproteasome機能低下により、cytochrome cおよびcaspase-3-like protease依存性のアポトーシスが誘導されることが明らかになった。さらに、断頭後、ATP枯渇状態の大脳皮質および海馬のlysateにATPを復したとき、大脳皮質ではproteasomeの20s分画と700PAの再会合がおこり、26s機能が回復するが、海馬組織ではそれが障害されていることが明らかになった。今後、calcineurinの下流にp53が作用しているとの仮説、海馬におけるATP依存性proteasome機能回復の不全の原因にcalcineurinが関与しているとの仮説を立て、それらを検証する予定である。

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