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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 887
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「脳を知る」平成10年度採択研究代表者
「脳の初期発生制御遺伝子群の体系的収集と機能解析」

平良 眞規1)
1) 東京大学大学院理学系研究科 助教授
Abstract:  ヒトの脳は他の生物に比べると非常に大きく複雑であるが、その形態形成の過程は他の脊椎動物と基本的には同じであり、前脳、中脳、後脳という3脳胞構造が初期発生段階の基本構造となっている。そこで脊椎動物の初期発生の解析に適しているアフリカツメガエルと、遺伝学的解析が可能な哺乳動物であるマウスを用いて、アフリカツメガエルにおいては脳の形態形成に関わる発生制御遺伝子の体系的な検索と解析を、マウスにおいては前脳領域に発現している遺伝子の遺伝子破壊による解析を行っている。アフリカツメガエルでは、予定脳組織である前部神経板とその発生運命を決定する頭部オーガナイザー領域(前部内中胚葉)の領域特異的cDNAライブラリーから無作為に単離したクローンに関し、5’側から塩基配列の決定とinsitu全胚ハイブリダイゼーションによる発現領域の検討を行い、新規遺伝子の検索を行っている。これまで多数の前脳領域あるいは頭部オーガナイザー領域に特異的に発現する遺伝子を同定した。それらの中から特に興味深い遺伝子XHR1などに関して現在機能解析を行っている。また脳誘導に関与すると考えられているオーガナイザー特異的ホメオドメイン蛋白質Xlim-1の標的遺伝子の解析を行った結果、脳誘導因子Cerberusの発現がXlim-1により直接制御されていることが示唆された。マウスでは、前脳に発現するEmx2とOtx2遺伝子の2重遺伝子破壊による機能解析を行っており、その結果、両遺伝子は終脳背側部と間脳の形成に協調的に関わっていることが明かとなった。今後は、カエルで見い出された新規発生制御遺伝子に関し、カエルでの機能解析と共にそのマウス·オーソログの遺伝子破壊による機能解析を行い、脳の初期発生の分子メカニズムを明らかにする予定である。

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