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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 871
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「脳を知る」平成9年度採択研究代表者
「神経系の遺伝的プログラムと可塑的メカニズム」

松崎 文雄1)
1) 東北大学加齢医学研究所 教授
Abstract:  複雑な神経ネットワークは、素子として働く神経細胞が独自の個性をもつことによって成り立ち、また、それは外界の刺激に応じて柔軟に変化する。このプロジェクトでは、ショウジョウバエと脊椎動物をモデル系として、神経系の多様性を生む遺伝的プログラムと構造的可塑性の分子メカニズムを明らかにすることを目標にしている。神経細胞の個性は、少数の神経幹細胞が非対称な分裂をくり返し、莫大な数の神経を生じる過程で形成されてゆく。本プロジェクトでは、ショウジョウバエ神経幹細胞の非対称分裂に伴って、姉妹細胞に非対称に分配される神経運命決定因子Mirandaを同定し、その解析から、神経幹細胞の非対称分裂が神経の運命決定に直接的な役割を果たすことを世界に先駆けて明らかにしてきた。その知見に基づき、神経幹細胞の非対称性を形成する分子機構をはじめとする、神経系の多様性の根本にある発生原理を解き明かそうとしている。また、行動学的手法と遺伝学を用いた神経回路形成の解析から、GTPaseカスケードに働く因子SIFとTrioを同定し、それらが神経回路形成の制御を行うことを明らかにしてきた。さらに、これらの因子の解析に基づいて、シナプスの構造的可塑性を担う新しいメカニズムを提唱し、神経回路形成における可塑性と機能的可塑性の両者を支える分子機構を明らかにしようとしている。

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