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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 862
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「脳を知る」平成9年度採択研究代表者
「シナプス可塑性の分子機構と脳の制御機能」

小澤 瀞司1)
1) 群馬大学医学部 教授
Abstract:  本研究の目的は、中枢神経系のニューロン、グリアに広範に存在する多種類のグルタミン酸受容体が、可塑性変化を中心とする中枢シナプスの機能発現、神経回路網での情報処理、個体レベルでの行動制御など脳機能全般に果たす役割を明らかにすることである。実験では、脳の各部位のニューロン、グリアを対象として、ウイルスベクターによるグルタミン酸受容体遺伝子の導入、標的遺伝子破壊法などの遺伝子工学技術を用いて、グルタミン酸受容体を人工的に操作することにより、ニューロンとグリアの機能に変動を加えて、それらが中枢神経回路網での情報伝達、シナプス可塑性、個体レベルでの脳の制御機能、脳の病態に与える影響を解析する。現在までの研究成果は以下の通りである。1)ウイルスベクターを用いて、種々のグルタミン酸受容体サブユニットを新規に効率よくニューロン、グリアに発現させ、これらの細胞機能、シナプス伝達特性を変換し得ることを明らかにした。2)グルタミン酸受容体およびGABA受容体が関与する小脳の種々のシナプスの可塑性変化の発現機構を部分的に解明するとともに、最も顕著な可塑性変化である長期抑圧の個体レベルでの役割を解析するために、マウス眼球運動計測システムを確立し、健常型野生マウスにおける基礎データを取得した。3)イオンチャネル型および代謝調節型グルタミン酸受容体の重要な基礎的特性のいくつかを明らかにした。今後はこれらの研究をさらに発展させることにより、グルタミン酸受容体が脳機能の発現に果たす役割の全貌を明らかにしていく。

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