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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 793
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「脳を知る」平成7年度採択研究代表者
「ヒト脳の単一神経細胞の発現遺伝子」

金澤 一郎1)
1) 東京大学大学院医学系研究科 教授
Abstract:  目的:ヒト脳の単一神経細胞で発現している遺伝子は、細胞毎に異なっており、それが細胞の個性を決めている。そこで、脳で発現している機能分子のファミリーメンバーをまず確定すること、レーザーにより単一神経細胞の切り出しを可能にすること、統計解析を考慮に入れながら超高感度のアッセイ系を開発すること、を同時平行で進める。さらにこの方法を用いて、極く初期に亡くなった神経変性疾患患者のやがて死ぬ運命にある神経細胞の発現遺伝子における特異的変化を確定することによって細胞の運命を知る。
方法:機能分子としてイオンチャンネルを集中的に扱うことにし、共通塩基配列のプライマーを用いてクローニングを行う。細胞の切り出しのためにはエキシマーレザーによるダイセクターを作成する。統計解析により最も適切なプライマーを設定しそれを用いた超微量RT-PCR法を確立する。
結果:(1)ヒト脳に発現する新規のNa+チャンネルを発見、SCN12Aと命名し、全シーケンスを決定した。in situ hybridizationにより、脳の神経細胞とグリア細胞の両者に発現していることを証明した。現在その生理学的機能を検討中である。
(2)既知ではあるが、従来ヒト脳での存在が知られていなかったNa+ 、Ca++チャンネルの存在を確認し、定量的カタログを作成している。
(3)エキシマレーザーを用いた単一神経細胞を切り出すためのレーザーダイセクターが完成し、約10μm 程度の大きさの神経細胞を切り出せるようになった。
(4)脳で発現している既知の遺伝子を例に用いて、ディファレンシアルディスプレイ(DD)での電気泳動パタンを予測する新しいコンピューターソフト群を開発した。
(5)単一神経細胞が発現する遺伝子を検索するための、超微量RT-PCR法およびそれに続くDD法がほぼ完成した。
(6)その方法を用いて、CAGリピート病の1つであるDRPLA小脳において、細胞毎にCAGリピート数に明らかなモザイシズムがあることを証明した。

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