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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 775
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「ゲノムの構造と機能」平成11年度採択研究代表者
「核内因子の局在と修飾に関する化学遺伝学的研究」

吉田 稔
1) 東京大学大学院農学生命科学研究科 助教授
Abstract:  【研究のねらい】
核タンパク質における核外輸送とアセチル化の意義を解明するため、核内·核外輸送阻害剤、アセチル化·脱アセチル化阻害剤、抗アセチルリジン抗体等、新しいバイオプローブの作製とその分子生物学への応用により、核外移行シグナル(NES)含有タンパク質、アセチル化タンパク質の網羅的な解析を行う。
【概要及び成果】
分裂酵母内でGFP融合タンパク質として発現させたときに核外輸送されるタンパク質を分裂酵母ゲノムライブラリーからゲノム全体の約1/3についてスクリーニングし、36株のポジティブクローンを得た。また、核外輸送の調節によって核タンパク質の局在が制御されるものを解析し、分裂酵母Pap1およびマウスBach2が酸化ストレスによって核外輸送が損なわれ核移行することを明らかにした。新規脱アセチル化阻害剤としてトリコスタチン/トラポキシンハイブリッド化合物CHAPを合成し、その構造活性相関を明らかにするとともに、これらがHDAC6に比べHDAC1に強く作用することを明らかにした。さらにアセチル化リジン含有ペプチドを抗原として用いてアセチル化ヒストンと強く反応する抗アセチルリジンモノクローナル抗体を作製した。
【今後の見通し】
ライブラリーからのスクリーニングには限界がある。そこで本年中にゲノムプロジェクトが終了すると考えられる分裂酵母のゲノムORFをすべてクローン化し、それらのGFP融合タンパク質の局在性と核外輸送阻害剤応答性を網羅的に観察する予定である。また、タンパク質アセチル化の解析のため、脱アセチル化酵素のアイソザイム選択的な阻害剤をコンピュータ分子モデリングを利用して設計するとともに、非ヒストン蛋白に対してより反応性の強い抗体の取得を試みる。

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