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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 772
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「ゲノムの構造と機能」平成11年度採択研究代表者
「ゲノムの安定保持を保証する細胞核構造の解明」

平岡 泰1)
1) 通信総合研究所関西先端研究センター 室長
Abstract:  本研究は、体細胞分裂と減数分裂の過程でゲノムの安定保持に寄与する染色体と細胞核の機能構造を解明することを目的とする。この研究のための実験系として、体細胞分裂の研究には、主にヒト細胞を用いる。ヒト細胞を用いる利点は、ゲノムプロジェクトにより2003年には全DNA配列が明らかになること、染色体構造に影響する遺伝性の疾患が多く報告されていること、そのような患者由来の細胞が存在することなど、個々の分子の機能を細胞レベルで解析するための道具が揃っている。ヒト細胞で困難な解析、高等動物の生殖細胞での染色体や核構造の解析にはマウスを用い、高等動物での遺伝子破壊にはトリ培養細胞DT40を用いる。減数分裂の染色体構造の研究には、主に分裂酵母を用いる。分裂酵母では、体細胞分裂から減数分裂に移行する過程で、染色体構造が劇的に変化することが知られており、分子遺伝学が容易であることから、生殖分裂でのゲノム保持機構のモデル系として有用である。これらの細胞に対して、本研究グループが開発した蛍光顕微鏡システムを用いて、セントロメアやテロメア、ヘテロクロマチン領域などの染色体構造の解析を行い、他の細胞核構造との機能的連関を検討する。さらに、これらの構造から、それに関連する遺伝子群の発見に至るための新しい技術として、GFP融合遺伝子ライブラリーを構築し、特定の細胞内局在を示すタンパク質の遺伝子を検索することを試みる。また、GFPのほかに、精製用のHis-tag を融合させることにより、生化学精製を行う。タンパク質複合体に含まれるタンパク質を全て網羅的に同定できる。主な研究項目は、(1)体細胞分裂における細胞核構造の解析、(2)減数分裂における細胞核構造の解析、(3)GFP融合遺伝子ライブラリーの構築、(4)細胞内局在する複合体の分離精製と構成タンパク質の網羅的な同定。

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