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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 764
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「ゲノムの構造と機能」平成11年度採択研究代表者
「ゲノム情報維持の分子メカニズム」

花岡 文雄1)
1) 理化学研究所 主任研究員
Abstract:  ヒトを含めた地球上のすべての生物は、外的あるいは内的要因により生じたゲノムDNA上の構造的異常を見つけて修復する、多様な機構を進化の過程で獲得してきた。これらの機構が、ゲノムに関わる広範な病気の発生を防御している。なかでもヌクレオチド除去修復の機構は、極めて広範なゲノム損傷に対応する重要な経路である。我々は、最近、ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair;NER)における損傷認識タンパク質の同定に成功し、その経路を解明する手がかりを得た。さらに最近、損傷を越えて忠実なDNAの複製をすることが出来る新たなDNAポリメラーゼ(polη)をヒト細胞から発見し、複製中に遭遇した損傷を回避する機構の研究に端緒を開いた。本研究では、これらの代表的な遺伝子修復機構を徹底的に解析し、ゲノム情報を安定に保持するための、分子メカニズムを明らかにすることを目標にしている。またこれらの機構に働く遺伝子に欠損を持つマウス個体を作成し、それらの解析から、これらの遺伝子がゲノム情報を維持し、個体をがんや老化、遺伝病から守る仕組みを明らかにするとともに、他の細胞機能におけるこれらの遺伝子の役割を知ることも目指している。本研究により、哺乳類におけるゲノム情報維持のための普遍的な戦略を明らかにすることが期待されるばかりでなく、がんや老化の仕組みの根本的な理解がなされるであろう。

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