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平成11年度 戦略的基礎研究推進事業 「研究年報」
Vol. 1 (2000) 761
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「ゲノムの構造と機能」平成11年度採択研究代表者
「p53によるゲノム防御機構」

田矢 洋一1)
1) 国立がんセンター研究所 室長
Abstract:  p53はヒトの癌の約50%で失活の見られる最も重要な癌抑制遺伝子であるが、細胞内でのこの蛋白質の機能やそれを制御するメカニズムはよくわからない点が多いので、これを明らかにするために研究を進めた。そして、今年度は以下のようなことを明らかにした。細胞のDNAがダメージを受けた際、p53が安定化して活性化されるためには以前に見つけていたSer15に加えてSer20のリン酸化も重要であることを見い出し、そのSer20をリン酸化するのはDNAチェックポイント制御に関与するChk1とChk2であることを明らかにした。また、p53はある場合にはG1停止を誘導するけれども別の場合にはアポトーシスを誘導する。この選択のメカニズムは重要な問題でありながら不明であったが、我々は、p53の新規なリン酸化部位Ser46がアポトーシス誘導を制御するらしいことを見いだした。この部位は細胞のDNAが深く傷ついてアポトースが誘導される時期に一致してリン酸化が誘導される。しかも、この部位を他のアミノ酸に置換した時にのみ、p53のアポトーシス誘導能が大きく変化する。このメカニズムは今後、癌細胞にのみアポトーシスを起こさせて死滅させる方法の開発などに応用できるかも知れない。

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